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名城大がみちびき受信データ含む自動運転技術開発用データセットを公開

2021年04月15日

名城大学が、東京・お台場等で収集した「自動運転の位置推定技術開発用データセット」の公開を3月11日から開始しました。このデータセットには、2019年11月に試験車両で取得した実走行時のデータ(IMU [慣性航法装置] による加速度や角加速度、LiDARによる3D点群など)が含まれています。みちびきを含む衛星測位データに主眼を置いたというこのデータセットを開発した、名城大学の目黒淳一准教授(理工学研究科メカトロニクス工学専攻)に話を聞きました。

名城大学と目黒准教授

名古屋市にある名城大学 天白キャンパス(左)と目黒准教授(右)

データを用いた「仮想的な走行試験」も重要な役割

自動運転のような大規模システムでは、必要とされる各機能をサブシステム化し、それぞれの完成度を高めて組み合わせるアプローチが有効です。そうしたサブシステムの一つである「自己位置推定・SLAM(Simultaneous Localization and Mapping)」の完成度を高める上で、実走行データを用いた「仮想的な走行試験」も重要な役割を果たします。

コース地図(東京・台場地区)

データ収集を行った東京・台場地区のコース例(©OpenStreetMap contributors)

目黒氏は、自己位置推定においてみちびきを始めとする衛星測位を用いた絶対位置座標は欠かせないとした上で、今回のデータセット公開の背景をこう説明します。
「周囲を認識し車両の自己位置を推定するには、各種センサのデータを統合するアルゴリズムが鍵となります。実走行試験が重要なのはもちろんですが、そのために車両を準備するハードルが高く、不具合に際しても、ハード起因かソフト由来かなどの問題切り分けに時間と手間がかかります。その点、こうしたデータセットを使った仮想的な走行試験であれば、問題が生じたとしてもソフトウェア由来だとはっきり分かります。データセットには“真値”としてPOS LV(Applanix社の測位システム)で記録したデータも含まれており、自分で“答え合わせ”しながら、効率よく開発を進められます」

自動運転やSLAMに興味を持つより多くのエンジニアや研究者の方に、まずは試みていただきたいという訳です。

トヨタ・シエンタをベースに改造した試験車両

トヨタ・シエンタをベースに改造した試験車両(上左、名城大学提供)。受信機の性能を比較評価するためルーフ上に複数配置したGNSSアンテナ群は、同一平面に載るよう金属のフレームに固定した(上右)。荷室スペースには受信機、バッテリー、PCなどが載る棚を整備し(下左)、後付のオーバーフェンダー内には、オドメトリーデータ取得用のタイヤ回転計を収めた(下右)

車両に搭載しているセンサ機器

車両に搭載しているセンサ機器の一部(3D LiDAR/IMU/GNSS受信機、名城大学提供)。Velodyne製 HDL-32e(上左)、Analog Devices製 ADIS16475-2(上右)、Ublox製 F9P(下左)、Trimble製 Alloy(下右)

内閣府SIPの自動運転技術研究の一環として実施

今回のデータセット公開は、内閣府の戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)第2期「自動運転(システムとサービスの拡張)」のうち「自動運転技術(レベル3、4)に必要な認識技術等に関する研究」(経済産業省担当)の一環として実施されました。この研究開発プロジェクトは、金沢大学の菅沼直樹教授が責任者を務め、中部大学がAI分野、名城大学が衛星測位分野の研究開発を担当する枠組みとなっています。またデータセットの作成には、ソフトウェア開発を手がける東海ソフト株式会社も協力しています。

SIPの研究開発体制図

SIPの研究開発体制図(金沢大学・菅沼教授の講演資料より)

データセットでは、ローコストの2周波モジュールを使った受信機と、測量級受信機のデータ、及びRTK基準局として同時刻の東京海洋大学の測量級受信機で測定したデータが、データ流通において標準的なRINEX形式で提供されます。
データの詳細は以下のサイトに記されており、利用には申請が必要です。

(取材・文/喜多充成・科学技術ライター)

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