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コアがCLAS活用したインフラ点検「ChronoSky Eyes」を提供開始

2023年09月06日

株式会社コアは、みちびきのCLAS(センチメータ級測位補強サービス)に対応したドローンを活用し、ダムや鉄塔などさまざまなインフラの点検業務を効率化できる点検ソリューション「ChronoSky Eyes」を2023年7月末から提供開始しました。その特徴と今後の展望について、同社GNSSソリューションビジネスセンターの山本享弘センター長(執行役員)と最上谷真仁チーフプロジェクトマネージャ、同センター営業統括部の黒川涼部長に聞きました。

顔写真

左からコアの山本氏、最上谷氏、黒川氏

ドローンの自動飛行でインフラを点検

コアは2022年5月からCLAS対応ドローンを活用した「ChronoSky」を提供しています。これは、CLAS対応の小型・軽量GNSS受信機「Cohac∞ Ten」(W100×D67×H24[mm]、100g以下)を搭載したドローン「ChronoSky PF2」を使用した、山間部など携帯電話圏外エリアでも利用が可能なドローン点検・測量ソリューションです。
それをさらに発展させてインフラ点検業務の支援目的に特化して開発したのが、今回の「ChronoSky Eyes」です。従来は点検作業員が現場で危険な場所に入り込み、構造物の傷やひびなどを目視で確認していましたが、ドローンを使うことで点検業務を安全かつ効率よく実現できるようになりました。

製品写真

Cohac∞ Ten(左)、ChronoSky PF2(右)

ChronoSky Eyesは、事前の予備飛行により作成した3次元地図上で設定した飛行計画に沿って高精度測位に対応したドローンを自動飛行させることで、熟練した操縦技術を持たない人でも点検対象物に機体を毎回同じ位置に精密に近づけて飛行できるため、点検に適した写真を撮影できます。
「山間部の砂防ダムや架空送電線の点検、河道閉塞の観測などふだん人が立ち入らない場所は、当然ながら携帯電話などの通信インフラも整備されていない場合が多くあります。そうした場面ではRTK測位(リアルタイムキネマティック:基準局の補正データを移動局に送信してリアルタイムで位置を測定する)を手軽に使っていただくのが難しく、インターネットがなくても精密な位置情報を取得できるCLASは大いに役立ちます」(最上谷氏)

利用想定場所

山中の架空送電線(左)や砂防堰提(中央)の点検、河道閉塞の観測(右)などに有効

予備飛行の撮影写真から3次元地図を生成

インフラ点検を行う際には、植生の変化、隣接する構造物の改築、土砂崩れなどによって地図データと実際の地形が異なってしまっている場合があります。既存の地図データを使ってドローンの飛行ルートを設定すると航行中に支障が起きる可能性があり、従来は、飛行前に作業員が現場で航行の妨げになるものがないかを調査していました。
ChronoSky Eyesには、対象エリアから十分な安全を確保した高度で事前の予備飛行を行い、さまざまな角度から撮影した画像の視差から対象物の3次元モデルを生成する「SfM(Structure from Motion)処理」機能があります。この機能を使えば点検対象エリアの最新の3次元地図を生成でき、事前に飛行ルート上の障害物の有無を確認し、どんな画像を撮影できるか見た上で、本番飛行の計画を作成できます。

仕組み図

ソリューションの流れ

利用者は、パソコンのソフトウェア画面に表示された3次元地図を見ながらウェイポイント(経路上の地点情報)を指定し、そこからの撮影イメージをシミュレーションで確認しながら最終的な撮影角度などを決められます。
「3次元地図の生成は、200m四方のエリアなら約10分で完了します。予備飛行を行った後に現場ですぐに3次元地図を生成するために、処理時間をできるだけ短くするようにチューニングしました。これによりスピーディに本番飛行を行えます」(最上谷氏)

飛行計画の作成

生成した3次元地図上で飛行計画を作成

同じ場所の写真を時系列で比較

本番飛行では、CLASの高精度測位を使った飛行制御により、点検対象物から約5mの距離に近寄って撮影できます。開発に当たっては砂防ダムなどをターゲットに実証実験を行うなどのテスト飛行を繰り返しながら改良を重ねてきました。
また、ChronoSky Eyesは、撮影した画像データや生成した3次元地図の点検箇所の管理を、専用ソフトウェアを使って簡単に行えます。画像データを位置情報や撮影時間にひも付けて3次元地図の仮想空間上で管理すれば、膨大なデータから点検箇所をすばやく抽出し、同じ場所の写真を時系列で比較して経年変化を容易に見つけ出すことができます。
CLASによる高精度な位置情報は、ドローンの飛行中の制御だけでなく、撮影した写真の位置情報を高精度に保つことにもつながり、より精度の高い分析が可能となります。
「当社は正確な位置情報が付与された画像データを時系列で管理できるところに大きな価値があると考えています。場所を選ぶことなく正確な位置情報を付与するための手段として、CLASはとても有効です」(最上谷氏)

比較画面

時系列で写真を一覧表示し、過去の撮影画像と比較

ドローンを使った点検をもっと身近に

ChronoSky Eyesを使えば、予備飛行、本番飛行のいずれも一般的なドローン操縦技術があれば点検作業を行うことができます。これまでは高度な操縦技術を持った人が手動操縦で点検していたようなケースでも、特別な操縦スキルがなくても扱えます。
「みちびきのCLASは、他のネットワークを使わずに正確な位置情報を得られる点において非常に便利です。今後さらに普及が拡大し、ドローンを活用した点検がもっと身近になっていくことを願っています」(最上谷氏)
なお、2023年9月7~8日に長崎市で開催される第2回ドローンサミットでもChronoSky PF2によるデモ飛行とChronoSky Eyesの展示を行い、有用性を広く訴求します。

同社は、自動航行をより安全に行うため、2024年度にサービス開始を予定しているみちびきの信号認証サービスにいち早く対応できるようよう、信号認証対応ドローンの検討を始めました。今年度は、みちびきを利用した実証事業に採択され、みちびきの信号認証サービスを用いた国産ドローンによるGNSS信号のスプーフィング(なりすまし)対策の実証に取り組んでいます。
今後は、CLAS対応ドローンを活用した河川管理向けソリューションとして、ドローンの空撮写真や3次元地図、点検調書などをGISプラットフォームで管理し、地形計測や災害時の被害箇所の検出などを行える新たなソリューション「ChronoSky 3D」の提供に向け、準備を進めていく予定です。

(取材/文:片岡義明・フリーランスライター)

参照サイト

※記事中の画像・図版提供:株式会社コア

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