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測位航法学会、2020年全国大会をオンラインで開催

2020年08月03日

一般社団法人測位航法学会の全国大会が7月15~17日の3日間にわたりオンラインで開催されました。同学会の全国大会は例年5月に東京海洋大学で開催されてきましたが、今年は新型コロナウイルス感染拡大防止のため7月に延期され、テレビ会議システムを使って発表者・聴講者がそれぞれの拠点から参加するオンライン開催となったものです。

全国大会の告知ページ

全国大会の告知ページ(測位航法学会ウェブサイトより)

最初の2日間は、専門家によるセミナーを開催

3日間の日程のうち最初の2日間に専門家によるセミナーが、最終日は研究発表会・特別講演会が開催されました。
初日7月15日に開かれたセミナーは「GPS/GNSSの基礎と高精度測位技術」。坂井丈泰氏(国立研究開発法人海上・港湾・航空技術研究所)が講師を務め、「衛星測位システムをブラックボックスにしない!」をスローガンに、GPS/GNSSの基本的な仕組みや誤差要因の解説、各国のGNSSシステムや、みちびきの紹介などを行いました。
翌16日は高須知二氏(東京海洋大学)が講師を務め、「RTK及びPPP技術の応用と実習」と題して、PPK(Post Processing Kinematic=電子基準点からの補正処理をデータ取得後に行う方式)、RTK(Realtime Kinematic=固定点の補正データを移動局に送信してリアルタイムで位置を測定する方法)、PPP(Precise Point Positioning=基準局のデータを利用せず、搬送波位相により単独で高精度測位を行う)など、さまざまなタイプの高精度測位を紹介しました。電離層モデル、衛星姿勢モデル、アンテナ位相補正など専門性の高いトピックスを詳説し、世界の商用補強サービスの動向と共に、みちびきのL6信号で送信されているCLASとMADOCAについても解説しました。
いずれのセミナーにも初心者から専門家まで幅広い層の100人前後が参加。企業のエンジニアや学生だけでなく、それぞれの専門分野を持つ研究者・実務家も多く参加して、講師とのチャットや質疑応答などで最新の研究知見を紹介して参加者間で共有するなど、オンライン開催の特徴を活かしたセミナーとなりました。
最終日となる17日は、午前中に以下の10件の研究発表が行われました。

  • 「RTK測位における基準局からの距離の測位精度への影響評価」小川真輝氏(神奈川工科大学 情報工学専攻)
  • 「新しい電子点の「日々の座標値」の開発」村松弘規氏(国土地理院 測地観測センター)
  • 「測地分野での応用に向けた低価格GNSS機器の性能評価」小門研亮氏(国土地理院 地理地殻活動研究センター)
  • 「搬送波位相を用いた速度測定」青木京平氏(東京海洋大学 情報通信工学研究室)
  • 「F9Pを利用したRTK環境と農業利用」岩城善広氏(岩城農場)
  • 「フィールドホッケー初心者に対するみちびきとGPSを用いたポジション教育」浪江宏宗氏(防衛大学校)
  • 「GNSS信号放射用クロス八木アンテナの試作」小林海斗氏(東京海洋大学 情報通信工学研究室)
  • 「オープンスカイで測位中のGNSS受信機が干渉電波に示した応答および屋内測位との判別困難性」岩本貴司氏(三菱電機株式会社)
  • 「省電力GNSS測位と地磁気測位の組み合わせによる屋内外シームレス測位」 栗田航貴氏(芝浦工業大学大学院)
  • 「屋内空間モデリングのための低テクスチャ面における点群生成」山口友一朗氏(芝浦工業大学大学院)
     

特別講演会の前半は、みちびきの現状を詳しく解説

最終日の午後には特別講演会が2部構成で開催されました。特別講演会の前半では、みちびき活用の現状、システムの整備計画やCLAS/MADOCAの現状と今後、さらに将来に向けた研究開発の方向性などが示されました。
特別講演会の前半(第一部)の演題と講演者は、以下のとおりです。

  • 「物流サプライチェーンにおけるシームレスな位置情報の必要性」新堀 聡氏(トランコム株式会社)
  • 「準天頂衛星システム事業の最新状況」小暮 聡氏(内閣府)
  • 「CLASサービスの現状と今後の展開」廣川 類氏(三菱電機株式会社)
  • 「MADOCA-PPPの概要とアジアオセアニア複数国での性能評価結果について」久保信明氏(東京海洋大学)
  • 「次世代高精度衛星測位技術の研究」河野 功氏(JAXA)
     

招待講演では、欧州の取り組みを紹介して活発な質疑

特別講演会の後半(第二部)は、欧州のスピーカーによる招待講演が行われ、日欧の参加者間で活発な質疑が交わされました。
講演に先立って、一般財団法人衛星測位利用推進センター(SPAC)の桜井也寸史氏が、“ガリレオの強みを活かし、スマホで高精度”をスローガンに欧州GSA(European GNSS Agency)が推進する、スマートフォンで高精度測位を実現させようという取り組み「Android Raw Measurement」の現状や、5月下旬にオンラインで開催された「GNSS Raw Measurement Taskforce」の年次報告会の様子を日本語で説明した後、次の三氏が招待講演を行いました。

  • 「Raw Measurement Task Force and opportunities for developers」マーティン・スンケビック氏(Martin Sunkevic、GSA)
    ── GSAがAndroid Raw Measurementに注力する理由や、アプリ開発状況などの最新成果を紹介。
  • 「The FLAMINGO experience: developing a 50cm positioning service for Smartphones」ジョシュア・クリッチリー=マローズ氏(Joshua Critchley-Marrows、英NSL)
    ── スマホで50cm精度を狙う野心的な「フラミンゴ」プロジェクトの総括として、スマホの限界をどうブレイクスルーしたかを紹介。
  • 「Impact of Robot Antenna Calibration on Smartphone-Based High Accuracy Positioning: A Case Study Using the Huawei Mate20X」フランチェスコ・ダルーニャ氏(Francesco Darugna、独GEO++)
    ── 高精度測位で弱点となるスマホの内蔵アンテナに着目、アンテナ特性の較正が測位性能改善への与える効果を紹介。
     
測位航法学会の安田明生会長

安田会長

初のオンライン開催を終え、同学会の安田明生会長(東京海洋大学名誉教授)は、次のようにコメントしました。
「やむを得ずの状況下で開催されたオンライン大会でしたが、例年よりも多くの参加が得られ、発表や報告へのコメントや質疑応答も活発に行われました。自宅やオフィスからの参加でハードルが下がり、参加者の反応も概ね良好でした。衛星測位に関わる技術研究の山を高め、裾野を広く世の中に浸透させる上でも、新たな形の活動を探るきっかけにできたのではないかと考えています」

同学会では、今秋開催予定のGPS/GNSSシンポジウムも、オンラインでの開催を予定し、準備を進めています。

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