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国土地理院、「つくばVLBIアンテナ」の運用を年内で終了

2016年11月09日

茨城県つくば市にある国土地理院の敷地内に立つ巨大パラボラアンテナ「つくばVLBIアンテナ」は、今年末に運用を終了します。これを記念して国土地理院は、11月4・5日の2日間にわたり「さようなら つくばVLBIアンテナ 18年の感謝をこめて」と題したイベントを開催しました。

VLBIは衛星測位の精度維持にも活用される

つくばVLBIアンテナ

つくばVLBIアンテナ

「VLBI(Very Long Baseline Interferometry、超長基線電波干渉法)」とは、宇宙のはるか彼方、数十億光年離れた星から届く微弱な電波を、地球上の複数のパラボラアンテナで同時に受信することで、数千kmも離れたアンテナ間の距離をわずか数mmの誤差で測定する測量技術です。

VLBIで計測されたデータは、プレート運動などの地殻変動や、地球の自転のゆらぎなどの監視に役立てられており、GPSや電子基準点の精度監視にも用いられます。また、地球の自転速度の変化を測定することで、衛星測位システムの精度維持にも活用されています。さらに、VLBIで算出した地球の自転や姿勢に関する情報は、ロケットや人工衛星の軌道制御を地上から行う際に使用されるほか、原子時計に基づく時刻と比較することで、うるう秒挿入の決定にも使用されます。

国土地理院の敷地内に1998年に建設されたこの「つくばVLBIアンテナ」は、今年5月から新しいVLBIアンテナが同県内の石岡市で運用を開始したため、年内12月で運用を終え、来年3月までに解体撤去されることになりました。

アンテナを間近で見られる見学ツアーを実施

今回の見学ツアーでは、アンテナのお皿の裏側や、お皿を支える支持筐体(きょうたい)などを間近に見ながら、約11mまでの高さまで登ることができました。

見学はお皿が上を向いた状態で実施

見学はお皿が上を向いた状態で実施

お皿の下まで登っていける

お皿の下まで登っていける

このアンテナは、お皿の直径が32mもあるにも関わらず、水平方向へ1周回るのにわずか2分しかかかりません。狭く急な階段を登っていくと、上下方向へ動かすための駆動部を見ることができます。また、水平方向の回転は、下部でアンテナを支える車輪をモーターで動かすことで行われます。

上下方向に動かすための駆動部

上下方向に動かすための駆動部

水平方向に回るための駆動部

水平方向に回るための駆動部

このアンテナのお皿は、硬質アルミニウム合金板製で、風速60mの風と震度7の地震でも問題のない強度でつくられています。1998年に運用を開始し、これまで国際的な観測に2,500回以上参加しました。ちなみに世界にはこのようなVLBIアンテナが約40機存在します。

アンテナのお皿

アンテナのお皿

先端部にはGPSアンテナも搭載

先端部にはGPSアンテナも搭載

イベントでは、数時間おきにアンテナが動くデモンストレーションも行われました。巨大なアンテナがすばやく動くその姿は、実に迫力があります。また、見学後には、参加者に対して「アンテナカード」も配られました。

アンテナカード(表面)

アンテナカード(表面)

アンテナカード(裏面)

アンテナカード(裏面)

石岡市の新アンテナは、より小型で高性能

石岡市の新しいVLBIアンテナ

石岡市の新アンテナ(画像提供:国土地理院)

石岡市に設置された新しいVLBIアンテナは、海面変動やプレート運動などの研究、人工衛星の位置決定、及び測位システムの高精度化などを目的とした新しい国際規格に基づいた次世代アンテナです。この国際規格では、1mmの精度や、24時間・365日連続観測、24時間以内の解析結果の提供などの達成を目指しています。

新アンテナは、お皿の直径が13mと小さくなり、周波数帯も広がり2~14GHzとなりました。また、駆動速度も筑波のアンテナより4倍速くなり、毎秒12度となります。これにより、24時間で捉える天体の観測回数は従来の約500回から約3,000回へと増えました。設置場所は石岡市の茨城県畜産センターで、遠隔操作によって常時観測できます。

12月18日までギャラリー展を開催中

国土地理院は、「地図と測量の科学館」において12月18日まで、同アンテナの功績を振り返るギャラリー展を開催しています。このギャラリー展では、つくばVLBIアンテナの歴史や、VLBIの原理・目的、日本のこれまでのVLBIアンテナ、石岡市の新アンテナの紹介などを行っています。

ギャラリー展の入り口

ギャラリー展の入り口

ギャラリー展の展示

展示の様子

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