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中部大学、妨害に強いGPS受信システムをJAXAらと共同研究

2019年10月07日

宇宙航空研究開発機構(JAXA)が日本政策投資銀行(DBJ)と実施する公募型研究「JAXA航空技術イノベーションチャレンジ powered by DBJ」に、中部大学の海老沼拓史氏(宇宙航空理工学科准教授)が取り組む研究テーマ「ビームフォーミング技術を応用したGPS干渉信号抑制による航法システムの高信頼性化」が採択されました。この研究テーマは、同公募で2018年に採択された18テーマのうち、フィージビリティ・スタディ(事業化可能性調査)を経て、JAXAとの連携研究フェーズに移行した3テーマのうちの一つです。

代表的な指向性アンテナであるパラボラアンテナでは、パラボラ面そのものを動かすことで電波を送受信する向きを変えています。パラボラ面が向く方向には感度が高くなりますが、それ以外の方向では感度がなくなります。
これに対して「ビームフォーミングアンテナ」は、アンテナを動かすのではなく、複数のアンテナ素子(アンテナ・アレイ)を電気的に結合することで、アンテナに指向性を持たせる技術です。移動体通信の基地局やWiFiアクセスポイントなどでも使われている技術ですが、GPS用のビームフォーミングアンテナについては、「多くの国で輸出規制品として扱われているのが現状」(海老沼氏)です。

近年、「旅客機やドローンなどの航法システムに大きな脅威となる、GPSに対する人為的な電波妨害の報告事例は増えています。意図的な攻撃(ジャミング)だけでなく、移動体通信基地局と干渉する場合もあり、妨害や障害に耐性の高いGPS用のビームフォーミングアンテナの必要性が高まっています。」(海老沼氏)

そこで海老沼氏が取り組んだのが、汎用的な民生品とデジタル信号処理によるソフトウェア無線(SDR=Software Defined Radio)の技術を応用した「GPS用ビームフォーミングアンテナの開発」というテーマです。

フィージビリティスタディでの実証実験の様子

左:受信した信号のデジタル処理を行うソフトウェア無線モジュール 右:試験用アンテナ(2素子)

左:受信した信号のデジタル処理を行うソフトウェア無線モジュール、右:試験用アンテナ(2素子)

受信結果のプロット

受信結果のプロット:ビームフォーミングで真南からの信号を受信しないようにしている(黄色:受信感度あり、青色:受信感度なし)

このアンテナが実現すれば、地上からの妨害電波を検知した場合その方向には感度を持たない(無視する)ような設定が可能となります。このことは衛星測位により得られる位置情報の信頼性を高め、ひいては航空機の誘導システムの信頼性を高めることにつながります。
また安価にこのシステムが実現すれば、航空機だけでなく自動車やドローンなどの移動体で幅広い市場が期待できるほか、技術的には耐妨害と相通じる「マルチパスの影響を軽減するシステム」にも期待が広がります。

研究プロジェクトは2021年度までの計画で、JAXAおよび大阪府立大学との共同研究で進められ、屋内GNSS試験用レドームでの実証実験や、実験用車両による移動体実証実験を目指しています。

JAXAとの連携
JAXA航空技術イノベーションチャレンジ powered by DBJ
「スマートフライト(高度判断支援)技術の研究開発」事業
中部大学 「小型SoC(FPGA+MPU)によるGPS受信機の研究開発・評価」
「小型アレーアンテナの研究開発・評価」
大阪府立大学 「適応型ビームフォーミングアルゴリズムの研究開発・評価」(オープンソース・ソフトウェアをベースとしたソフトウェア無線による開発環境の整備)
JAXA 「高性能GNSSフロントエンドの研究開発・評価」(最大7アンテナによるビームフォーミングを目指し、8x8 MIMO対応の無線ICなどを利用した高性能フロントエンドを開発)
「INS*複合技術の研究開発」
「車載実証実験による評価」

*INS(慣性航法装置、Inertial Navigation System)
図版・資料提供:中部大学 海老沼氏

(取材・文/喜多充成・科学技術ライター)

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