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横浜のMWE 2019で高精度衛星測位の最新技術を紹介

2019年12月16日

マイクロ波・高周波技術分野での最新デバイス展示や研究発表を行う「2019 Microwave Workshops & Exhibition(MWE 2019)」が今年も11月27~29日の3日間、横浜市で開催されました。今年のテーマは「IoT社会の未来を築くマイクロ波テクノロジー」で、ワークショップでは5G通信やワイヤレス給電などと並んで高精度衛星測位が題材に取り上げられました。2日目の11月28日に行われたワークショップ「高精度衛星測位の最新技術」では、三菱電機株式会社の高橋徹氏を座長として、産官学、そして海外からの講演者が登壇し、高精度測位に関する議論が交わされました。ここでの各氏の講演概要を紹介します。

みちびきのサービス概要と利活用事例

── 内閣府・佐藤氏

内閣府 宇宙開発戦略推進事務局 準天頂衛星システム戦略室の佐藤彰技術参与は、みちびきのサービス概要と運用状況、世界各国の衛星測位システムの概況を説明した後、数と種類を増やしつつあるみちびき対応受信機と、農業機械、交通安全分析、スポーツ用ウェアラブル端末などの分野における製品化されたサービス事例を具体的に解説しました。また、鉄道や船舶、営林管理、測量など今後拡大しつつある分野での活用や実証実験の事例も紹介しました。

汎用GNSS受信機とIMU、速度センサによる測位性能評価

── 東京海洋大・久保教授

東京海洋大学の久保信明氏(海洋工学部 海事システム工学科 教授)は、都市部の高速道路などをフィールドに、複数のGNSS受信機(CLAS対応のコア「Chronosphere-L6S」、低コスト2周波のu-blox「F9P」、Applanix「POS LVX」、アンテナ:JAVAD「GrAnt-G5T」)の測位データと慣性航法装置(IMU)、速度センサ(ホイールの回転数をカウント)の組み合わせ方で位置情報の精度や信頼性がどのように変化するかを実測データを示しながら解説しました。その結果、センチメータ級測位補強サービス(CLAS)では、高架下などで一度、衛星から電波が途絶えてからのリカバリーが速く、使い勝手が良いとの評価を示しました。ちなみに、この実験で使用したCLASの補強信号は、スマートフォンのモバイルネットワーク経由で入手したものでした。
また、国際会議「ION GNSS+」での発表動向を解説し、基地局の観測情報を用いて高精度測位を行うOSR(Observation State Representation)から、広域を対象に補強情報を配信するSSR(State Space Representation、広域RTKとも呼ばれる)に向かう世界的な潮流を感じたとの見解を示しました。

高精度測位補強サービスと国際標準化

──三菱電機・廣川氏

三菱電機株式会社の廣川類氏(鎌倉製作所 宇宙統合システム部 次長)は、センチメータ級測位補強サービス(CLAS)を「高精度測位を実現する国家インフラ」と位置付け、その概要について説明しました。このサービスは、全国約300点の電子基準点リアルタイムデータから全国をカバーする補強情報を作成し、みちびきのL6信号(2000bps)で配信、受信機側で測位演算を行うもので、一般的にはPPP-RTKと位置付けられる高精度測位方式です。廣川氏は、衛星経由での補強情報配信を可能とするため、約1000分の1にデータ量に圧縮する「compactSSR」が中核技術の一つであると解説しました。また、Galileoの高精度測位サービス「HAS(High Accuracy Service)」でもcompactSSRの採用が計画されており、この技術をオープンな世界標準規格とするための取り組みを進めていることも紹介しました。

高精度GNSS測位を行う「HPG」の概要を紹介

── u-blox・ストヤノフ氏

u-blox AG(スイス)のウラジミール・ストヤノフ氏(Mr. Vladmir Stoyanov Product Center Positioning, Product Strategy, Principal)は、移動体制御の自動化が進むほど正確な位置情報が要求されるとして、同社が提供するHPG(High Precision GNSS、高精度GNSS測位)の概要とデバイスやソリューションなどを紹介しました。高精度測位におけるOSR方式とSSR方式の違いなどに触れながら、世界に先駆けて高精度測位の補強情報の無償配信をスタートさせた日本は世界的に見ても注目の市場であり、「新たなビジネスの進展を注視しており、適切なタイミングで製品を投入し、市場拡大に積極的に関わっていきたい」とコメントしました。また、低価格2周波受信モジュールとして注目を集めている「ZED-F9P」について、「まもなく後継機を市場投入する」との予定を語りました。

展示の様子

展示の様子

(取材・文/喜多充成・科学技術ライター)

以上