コンテンツです

国交省が横浜市で、位置情報アプリの実証イベント開催

2017年02月19日

国土交通省は2016年11月に2020年の東京オリンピック・パラリンピック開催に向けて、スポーツイベント時の位置情報を活用したサービス創出を考えるアイデアソンとハッカソンを日産スタジアム(横浜市)で開催しました。これは同省が行う高精度測位社会プロジェクトの一環として実施されたもので、衛星測位やビーコンなどを組み合わせた高精度な屋内外シームレス測位技術を活用して、日産スタジアムの場内や、同競技場のある新横浜公園、スタジアムへたどり着くまでの過程も含めて新しいサービスを考えました。

2017年1月28日、このアイデアソンとハッカソンで創出されたサービスの実証イベントが、同じ日産スタジアムで開催されました。この実証イベントの目的は、ハッカソンで生み出したアプリケーションを一般市民に体験してもらい、使用感や問題点などのフィードバックを得て、アプリの完成度を高めることです。同日に開催された「第10回日産スタジアム駅伝大会 supported by ファイテン」において、駅伝参加者や応援に来た人たちにアプリの感想などを聞くアンケートを実施しました。

日産スタジアム

日産スタジアム

最初にアプリや取り組みを発表

今回の実証イベントには、アイデアソンとハッカソンに参加した6チームすべてが参加しました。当日はまず前年11月に行ったアイデアソンとハッカソンを振り返り、そこで生まれたサービスやアプリを各チームが発表しました。

発表会場

実証イベントの発表会場

また、今回のイベントに協力した株式会社NTTドコモと一般財団法人衛星測位利用推進センター(SPAC)による高精度測位社会プロジェクトへの取り組みの発表も行われました。

奥村氏の説明

NTTドコモ コンシューマビジネス推進部の奥村浩之氏

NTTドコモは、ナビゲーションアプリ「ドコモ地図ナビ」を活用して、ビーコンとPDR(Pedestrian Dead Reckoning、歩行者向け自律航法)を組み合わせることで、スタジアム内の座席周辺まで案内するナビゲーションサービスの実証実験を行います。

竹下氏の説明

SPACの竹下順明氏

また、SPACは、国土交通省が提供するナビゲーションアプリ「ジャパンスマートナビ」を利用して、東京駅周辺及び日産スタジアムにおいて車椅子利用やサービス介助士のためのナビゲーションサービスの実証実験を行います。

アプリ発表後、スタジアムで実証開始

発表後、日産スタジアム内のコンコースやスタンドへと移動し、各チームごとに実証を開始。駅伝参加者やその応援に来ている人たちに声をかけて、了承を得た上でハッカソンの説明やサービス・アプリの紹介を行いました。

駅伝大会

駅伝大会の様子

具体的には、パネルを使ってサービスの内容を説明したり、スマートフォンやノートパソコンの画面などを見せてアプリのデモを行ったり、操作してもらったりしました。その上で、アプリを使用した感想をアンケート形式でヒアリングしました。駅伝会場には、外国人や障害者、子連れの人など、さまざまな人が訪れていたため、幅広い層の意見を聞くことができました。

アンケートの様子

アンケートの様子

アンケートの様子

アンケートの様子

アンケートの様子

駅伝参加者や応援に来た人にアンケートを実施

アンケートの様子

6チームが実証結果を発表

実証が終わった後は、その結果を整理して各チームごとに発表しました。

▽AELU ROAD(チーム名:炭水化物)

チーム「炭水化物」の発表

駅からスタジアムまでの道中に、仲間とスムーズに合流し、ストレスなくスタジアムへ行けるアプリです。グループメンバー同士が無理なく自然に合流できるように、音楽と音声で方向などが案内されます。グループごとに合流ポイントが分散されるため、混雑・滞留を回避できます。実証イベントでは男性12名、女性5名にアンケートを実施し、この中の9割の人から「アプリを使用したい」という回答を得ました。使いたい理由としては「混雑するところで待ちたくない」「自然に出会うのが良い」といった点が挙げられました。

▽ランマス(チーム名:PPAP)

チーム名「PPAP」の発表

新横浜公園のランニングコースのナビゲーションアプリです。公園内のネットワークデータを利用し、コースの難易度も選択可能です。公園内に設置されたビーコンで、ランニング時のラップタイムや最終タイムも取得できます。走行記録はランキング形式でウェブサイトなどに公開します。今回は6名に話を聞き、「ランキングは面白そう」「新横浜以外でも使いたい」「どこを走ったかを記録したい」「きついコースや楽なコースなど、強度を選べるといい」といった意見が得られました。

▽シチュアシ(チーム名:バリスタ)

チーム「バリスタ」の発表

視覚障害者や聴覚障害者に向けたバリアフリーアプリです。駅からスタジアムまでのナビゲーションや、トイレなどの施設を目的地として選ぶと、現在地の位置情報をもとに案内する機能があります。また、試合中に応援しているチームに点が入ると「Shake!」と表示され、ユーザーがスマートフォンを振ると、その熱狂を集計してヒートマップ表示します。実証イベントでは、スタジアム内のビーコンの検出や「Shake!」機能の動作などを確認できました。来場者へのアンケートでは「アプリの文字が大きくなると良い」「多言語に対応してほしい」「アプリのマップ上に競技者の情報を載せてほしい」といった要望がありました。

▽どこ混むシステム(チーム名:パラレルズ)

チーム「パラレルズ」の発表

来場客が持つスマートフォンアプリが収集したデータをもとに、スタジアム内の混雑状況をリアルタイムに可視化します。スタジアム管理者に対しては、警備員配置マップや混雑状況マップ、避難完了人数データなどを配信し、警備員のスマートフォンには避難誘導指示を配信してスムーズな避難誘導を実現します。実証イベントでは、Android端末5台分を同時にテストし、5台分の情報を色別にマップ上に表示できることを確認しました。また、アンケートでは3人に話を聞き、災害時に有効という感想が得られました。

▽Share Senses(チーム名:ワーッ!!)

チーム「ワーッ!!」の発表

スマートフォンのGPSやビーコン、速度センサーなどの位置情報を使って歓声や盛り上がりをキャッチし、ヒートマップ表示したり、写真やムービーでシェアしたりできるサービスです。ユーザーの視点からスタジアムを写した写真を共有できる「視線ビュー」機能などを搭載。実証イベントでは8名にアンケートを実施し、「オリンピックなどで、自分の知らない競技を見るときに使える」「オリンピック・パラリンピック時に全ての会場で使えるのか」といった意見が得られました。

▽Easy Stadium(チーム名:ハッカソンじゃけぇ)

チーム「ハッカソンじゃけぇ」の発表

訪日外国人向けのスタジアム観戦支援サービスで、空港からスタジアムの席までをスムーズに案内します。試合会場を探して、スタジアム周辺の情報を確認し、スタジアム内の売店やトイレ情報などを確認できるほか、友人と待ち合わせる機能も搭載します。待ち時間に楽しめるボールゲームも提供します。実証イベントでは、7組にアンケートを実施し、そのうち3名が外国人でした。「電車の乗り換えや駅から目的地までの情報が分かるとうれしい」「スタジアムから帰る時に外国語が分かる飲食店の情報がほしい」「外国語サイトへの直リンクがうれしい」といった感想が得られました。

神武氏の説明

神武氏

コーディネーターを務めた慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科(慶應SDM)の神武直彦准教授は、「高精度社会プロジェクトは今後も続いていくので、今回創出したサービスやアプリを実用化させたいという人はぜひ進めてほしいし、私たちもできる限りご一緒したいと思います」とコメントしました。
今回のアイデアソン、ハッカソン、実証イベントで生まれた成果は、国土交通省が主催する3月の成果発表会で発表される予定です。これらの成果が今後、どのように発展していくのか注目されます。

(取材/文:片岡義明・フリーランスライター)

参照サイト

関連記事