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海上技術安全研究所がみちびきCLAS活用の小型船自動着桟実験を公開

2021年04月05日

国立研究開発法人海上・港湾・航空技術研究所の一部門である海上技術安全研究所は3月18日、広島県尾道市の因島マリーナ周辺の海上でみちびきのセンチメータ級測位補強サービス(CLAS)を活用した小型船の自動着桟実験を実施しました。

小型実験船「神峰」

小型実験船「神峰」

実験を行ったのは同研究所の小型実験船「神峰」で、2014年に建造された総トン数約17トン、全長16.5mのFRP(繊維強化プラスチック)船です。これまでバス車両を乗客ごと離島に輸送するシームレス船システムの開発や、リチウムイオン電池・燃料電池等の実験、油圧操舵システムの実験などに供されてきました。今回の実験に向け、キャビンのもっとも高い位置にみちびきのCLAS受信機用のアンテナを装備し、GPSコンパスや風向風速計のセンサ入力をもとに自動操船を行いました。

小型実験船「神峰」
GNSSアンテナと受信機、GPSコンパス

GNSSアンテナは操舵室上のもっとも高いところに設置された(上の2点)。GNSS受信機(下左)と船首方位を計測するGPSコンパス(下右)

好天の中、着桟実験を4回実施

当日の天候は晴れ。気温14.3度、風速2.6m/秒(14時時点)と穏やかでうねりのない海上で、以下の手順により自動操船による着桟実験が4回行われました。

1)みちびきのCLASに対応したGNSS受信機で現在位置を取得
2)その位置から指定された桟橋への経路を作成
3)経路に追従するようにクラッチ(動力伝達)と舵を制御し自動操船
4)着桟して停止

実験中の操舵席

実験中の操舵席

船上から船首方向を見た画像

船上から船首方向を見た画像(当日は、桟橋に接近し停止するまでを生中継した)

船上から船首方向を見た画像

桟橋に近づく実験船

実験はウェビナー形式でオンライン公開され、同研究所の平田宏一氏(動力システム研究グループ グループ長)が洋上の操舵室からシステムの内容について解説しました。ウェビナーの参加者からは「このシステムでどの程度の大きさの船舶まで対応可能か?」「衛星測位の位置精度は十分か?」といった質問が寄せられ、その場で「対象船舶の大型化は将来の研究開発課題」「精度は十分だが、より信頼性を高めるために、他のセンサと組み合わせを検討中」などと回答しました。

操作用PCの画面

操作用PCの画面(制御状態や経路、風向風速などの必要情報を1画面に表示)

操作用PCの画面

3DCGにより、視点を切り替えて表示可能

システム構成図

システム構成図。自動着桟は、PLC(Programmable Logic Controller)に接続した制御用PCで行う

最後に同研究所の澤田涼平氏(知識システム研究グループ 研究員)が「今後は障害物や風を考慮した経路計画の作成、船速舵角制御を行い、より実用的なシステムを目指しつつ、ユーザーインターフェイスの改良も進め、船員の負荷低減につなげていきたい」と説明し、この日の実験は終了しました。

実験後の「神峰」

着桟し係留される小型実験船「神峰」

(取材・文/喜多充成・科学技術ライター)

参照サイト

※記事中の画像及び図版提供:海上技術安全研究所