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日本測量協会が、測量・地理空間情報イノベーション大会を開催

2017年08月25日

公益社団法人日本測量協会は6月27・28日の2日間、都内で第3回測量・地理空間情報イノベーション大会を開催しました。この大会は、「測量・地理空間情報に関する技術と、それを利活用した新事業の展開」などを目的として「技術革新に資する幅広い議論と情報発信の場」を提供するためのイベントです。実施された講演やセミナーの中から、GNSS技術に関連するいくつかを紹介します。

当日の開催風景

i-Constructionにおける測量の役割

国土交通省 国土地理院 鹿野正人氏

国土交通省 国土地理院の鹿野正人氏は「i-Constructionにおける測量の役割」と題した講演を行いました。ICTの導入で土木建設分野での生産性向上を目指す「i-Construction」において、レーザ測量やUAV(ドローン)などに加え、電子基準点を使った連続観測網(GEONET)の活用は、高効率・高精度の測量には不可欠であると強調しました。そして測量新技術の導入に向けた取り組みは今後も重要であり、人材育成や若手・女性など新たな担い手の確保や活躍の場の拡大が重要であるとしました。

準天頂衛星システムの概要と利活用

日本電気株式会社 神藤英俊氏

日本電気株式会社の神藤英俊氏は「準天頂衛星システムの概要と利活用」と題した講演を行いました。みちびきの概要に加え、衛星測位サービス、センチメータ級測位補強サービス、サブメータ級測位補強サービスなどの概要について解説し、今後の実証実験の推進に向けた取り組みについて触れた後、産業の各分野における利用イメージを紹介しました。

マルチGNSSに関する国土地理院の取り組み

国土交通省 国土地理院 古屋智秋氏

国土交通省 国土地理院の古屋智秋氏は「マルチGNSSに関する国土地理院の取り組み」と題した講演を行いました。GEONETの概要について触れた後、2013年からGPSに加え、みちびきとGLONASSのデータ提供を開始し、さらに昨年(2016年)からガリレオのデータ提供を開始してきた経緯を説明。この日の時点で約1300点の電子基準点のうち1058点がガリレオに対応したと報告しました。

国際測地基準とVLBI

国土交通省 国土地理院 宮原伐折羅氏

国土交通省 国土地理院の宮原伐折羅(ばさら)氏は「国際測地基準とVLBI」と題した講演を行いました。地球の形状の変化や回転の不規則なゆらぎ、重力場の変動などを反映した地球規模の測地基準座標系(GGRF)を支えるVLBI(超長基線電波干渉法)やSLR(衛星レーザ測距)などの地球の形を計測する技術を解説し、昨年末に退役したつくばVLBIアンテナや、最新技術が投入された石岡測地観測局のVGOS(VLBI次世代観測システム)アンテナを紹介した上で、この観測局が担う、日本の測量の基準となる位置(緯度・経度)を決める役割や、うるう秒挿入の基準となる精密な地球自転速度の測定などの役割を説明しました。

自動運転に貢献するダイナミックマップの実現に向けて

ダイナミックマップ基盤企画株式会社 三徳昭弘氏

ダイナミックマップ基盤企画株式会社の三徳昭弘氏は「自動運転に貢献するダイナミックマップの実現に向けて」と題した講演を行いました。ダイナミックマップとは、自動走行する車両が自己位置の推定や周辺環境の認知を行うための高精度な3次元地図です。従来のカーナビ用の地図をはるかにしのぐ情報量であり、地図そのものを高度化し、仕様統一や標準化を図ることが重要となるため、その基盤を構築する組織としてダイナミックマップ基盤企画株式会社が設立されました(6月末にダイナミックマップ基盤株式会社に社名変更)。同社は、今年度からの高速道路3万kmのデータ提供に向け仕様を検討中であるほか、サンプルデータ500km分を自動車メーカーに提供し評価中とのことです。

自動走行とcm級測位補強サービス

三菱電機株式会社 瀧口純一氏

三菱電機株式会社の瀧口純一氏は「自動走行とcm級測位補強サービス」と題した講演を行いました。みちびきのセンチメータ級測位補強サービスは、高精度測位を実現する補強信号を日本全国均一に放送するものです。同サービスでは、国土地理院のGEONETの情報をもとに電離層遅延や対流圏遅延といった誤差要因を推定し、補強情報を生成します。そのデータを約1000分の1に圧縮して高仰角のみちびきから配信するものです。このサービスを利用した自動運転用の高精度地図生成ツール「三菱モービルマッピングシステム(MMS)」や、高精度3次元位置情報を利用する基盤構築への取り組みなども紹介しました。

(取材/文:喜多充成・科学技術ライター)

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