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熊谷組など3社、GNSSを活用したクローラキャリアの自動走行技術を開発

2018年02月16日

株式会社熊谷組と株式会社KATO HICOM、JMUディフェンスシステムズ株式会社の3社は、衛星測位を活用して不整地運搬車(クローラキャリア)を自動で走行させるための新技術を開発しました。これにより、不整地運搬車オペレーターの負担軽減による工事の安全性の向上と、同一オペレーターによる複数台の運転管理による生産性の向上を図ることが可能となります。

GNSS搭載の不整地運搬車を遠隔操作して教示経路を作成

操作室

この新技術は、不整地運搬車のオペレーターが、運転席から離れた操作室から走行状況をカメラ映像で確認しながら土砂積載場所から搬出場所まで遠隔操作で運転する「教示運転」を行い、その操作内容をコンピューターに記憶させ、不整地運搬車を自動走行させるというものです。

教示運転の仕組み図

教示運転(=操作室から不整地運搬車を遠隔操作)の仕組み

教示運転では、操作室と不整地運搬車の両方にコンピューターを設置して無線LANで接続。操作室でオペレーターがカメラの映像を確認しながら不整地運搬車を遠隔操作することで運搬経路を記憶させます。不整地運搬車では、車体に設置したGNSS受信機とIMU(慣性計測装置)で車体の位置を測定し、そのデータと操作情報から、車載コンピューターで教示経路を作成します。さらに教示運転の終了時、操作室のコンピューターに作成した教示経路を送信して保存します。

自動運転の仕組み図

自動運転(=操作室PCから車載PCへ教示経路、正逆走情報を送信)の仕組み

教示運転が終わった時点で自動走行を選択すると、操作室のコンピュータから不整地運搬車のコンピューターに教示経路と正逆走の情報が送信されて、これらの情報をもとに自動走行が行われます。安全のため、自動走行時も常に操作室と通信を行います。この時、自動走行の途中でも操作室からの停止指示や非常停止信号が優先されます。

実運用に向け、工事現場で2回の実験を実施

本技術の開発に当たっては、熊谷組が雲仙普賢岳などの災害復旧工事で確立した、複数の建設機械を操作室から遠隔操作で行う「ネットワーク対応型無人化施工システム」の要素技術が活用されています。
3社は、実運用に向けて自動走行システムの精度と運用方法の確認を行うため、熊本県の阿蘇大橋地区斜面防災対策工事の現場において2回の実験を行いました。1回目は自動走行の精度に関する実験、2回目は自動走行の運用方法に関する実験です。

走行実験場所

走行実験場所

第1回実験における教示運転との蛇行量(表組み)

第1回実験における教示運転との蛇行量(熊谷組のプレスリリースから作成)

精度に関する実験では、教示経路に対する蛇行量が平均30cm、最大で70cmという結果が出ました。また、運用方法に関する実験では、1台が自動走行で移動している時間を別の1台の土砂積込や搬出作業に利用し、生産性を向上させられることが確認できました。

教示経路からの蛇行量(グラフ)

教示経路からの蛇行量

1回目蛇行量を基準とした各回の蛇行量(グラフ)

1回目蛇行量を基準とした各回の蛇行量(1回目の走行軌跡と蛇行量を比較)

土木工事において、土砂の運搬は、積込箇所から搬出場所まで、ほとんど同一の経路を往復する繰り返し作業を行っています。この作業は運搬経路からの逸脱や車両の離合などの危険、そして運転手の疲労蓄積や集中力の低下による事故の危険もあります。不整地運搬車の自動走行を実現させることで、運搬作業の安全性および生産性向上が期待できます。
今後は自動走行の精度向上を図ると共に、安全面においても運用方法の検討を十分に行い、本格的な実運用に向けて準備を進める予定です。

※ヘッダの画像はイメージです。本文画像提供:株式会社熊谷組

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