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海上保安庁、ディファレンシャルGPSの運用を終了

2019年03月04日

海上保安庁は、GPSの測位精度を向上させるシステム「ディファレンシャルGPS(DGPS)」を3月1日に終了しました。このシステムは、宗谷岬から宮古島まで全国27の無線局から、GPSの補正情報に加え、GPS衛星の故障やシステムの運用状況などインテグリティ情報も提供するものです。

日本全国のDGPS局
今回の廃止を判断するに至った理由として、海上保安庁は次のように説明しています。
  • 国際海事機関(IMO)は船舶に外洋で100m以内、港内で10m以内の測位精度を求めているが、GPSそのものの測位精度が上がり、DGPSを用いなくとも必要な精度が実現している。
  • 補正情報を提供するMSAS(運輸多目的衛星航法補強システム)は、多くのGPS受信機で利用できる。
  • 準天頂衛星みちびきの運用が始まり、さらに測位精度が向上する。
  • GPS週数ロールオーバーにより、DGPS装置の時刻管理が不能となり、補正情報の信頼性を担保できない状況となる。

測位精度劣化による誤差をDGPSで補償

DGPSの仕組み

DGPSの仕組み(出典:海上保安庁ホームページ)

DGPSの運用が始まった1997年当時は、まだGPSの測位精度に100m程度の誤差が残っていました。民間が利用できる信号(L1C/A)は、SA(Selective Availability、選択利便性)という運用ポリシーにより、精度劣化が意図的に行われていたからです。
この精度劣化は、相対測位の一手法であるDGPSで補償することができました。正確な座標の分かっている固定局(基地局)で衛星測位を行い、誤差に関わる情報を抽出し、無線で船舶等に送信することで、船舶等の測位精度向上を実現させるという仕組みです。送信される情報が、本来の位置と衛星測位で求められた位置の差分(ディファレンス)であることから、DGPSと呼ばれます。

1997年以来、22年にわたり海の安全に貢献

対馬オメガ局電波塔

対馬オメガ局電波塔(イメージ)

海上保安庁がDGPSを開始した1997年は、GPS登場以前の電波航法システムを支えてきた地上アンテナ・対馬オメガ局(長崎県、地上高455m)の運用が終了した年でした(翌年、閉局)。DGPSの開始を受けて、この年、カーナビを対象にFM多重放送に信号を載せて送信するサービスも始まるなど(2008年に終了)、測位システムにとって節目の年となりました。
以来22年にわたり海の安全に大きな貢献を果たしてきた海上保安庁のDGPSは、みちびきに代表される新技術や後継システムにバトンを渡し、その運用の歴史に幕を下ろしました。

※ヘッダ画像は、全国27カ所にあるDGPS送信所の1つ、外房地区の犬吠埼送信所(千葉・銚子市)

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