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みちびき活用の視覚障害者支援策が、S-Booster 2019で最優秀賞に

2019年12月19日

宇宙のアセット(資産)を活用した新たなビジネス創出を目指す、内閣府主催のビジネスアイデアコンテスト「S-Booster 2019」の最終選抜会が、11月25日に都内で開催されました。この最優秀賞に、視覚障害者向けの外出支援ツール「『あしらせ』 みちびきを活用した視覚障がい者向け歩行支援センスウェア」が選ばれ、提案者の千野歩氏(ちの わたる、チーム名:SensinGood Lab.)に賞金1000万円が授与されました。

L1S信号で道路のどちら側かを判別する「あしらせ」

2017年から始まったS-Boosterは、今年で3回目を迎えました。今回は、募集対象地域を日本国内からアジア・オセアニアに拡大し、広くアイデアを募りました。応募総数300件の中から書類選考や予選を経て最終選抜会に残ったファイナリスト12チームには、タイ、フィリピン、インドからの参加者も含まれています。
こうした中で最優秀賞を受賞した「あしらせ」は、みちびきのL1S信号を使用したサブメータ級測位補強サービス(SLAS)で得た正確な位置情報をもとに、視覚障害者の外出を支援します。利用者が道路のどちら側にいるかを判別し、曲がり角や停止位置など、歩行支援につながる情報を足裏や足の側面に振動で伝える、インソール型のデバイスです。

プレゼンテーションに登壇した千野氏

プレゼンテーションに登壇した千野氏は、視覚障害者へヒアリングを重ねた結果、視覚障害者は外出の際に、周囲や路面の状況を知るために耳を澄まし、白杖(はくじょう)の反応に神経を集中させているとした上で、そうした感覚を邪魔しないよう、また、忘れて出かけることのないよう、正確な位置情報をもとに、足に振動で情報を伝えるシステムを考案した、と説明しました。このツールを「靴の中に仕込んだ仮想点字ブロック」と位置づけた千野氏は、ツールの構成だけでなく、開発の動機となる個人的な体験や、より多くのユーザーに安価に利用してもらうためのビジネスモデルも併せて提案し、審査員の高い評価を獲得しました。

あしらせ プロトタイプ(「S-Booster 2019最終選抜会」ライブ中継より)

あしらせ プロトタイプ(「S-Booster 2019最終選抜会」ライブ中継より)

あしらせ 展開計画(「S-Booster 2019最終選抜会」ライブ中継より)

あしらせ 展開計画(「S-Booster 2019最終選抜会」ライブ中継より)

あしらせ 展開計画(「S-Booster 2019最終選抜会」ライブ中継より)

特別審査員を務めた東京大学空間情報科学研究センターの柴崎亮介教授は、「アジア・オセアニア地域に枠を広げたことで、多くの魅力的な提案に出会えました。タイの予選会で見た荒削りなアイデアもそうですし、ファイナリストとして登壇した、バンコクの交通渋滞緩和のアイデアも大きなインパクトがありました。後者は、GNSSによる位置情報が課題解決の大きなカギとなることを示しています」と審査を振り返りました。

「S-Booster 2019最終選抜会」ライブ中継

柴崎教授が「インパクトの大きいアイデア」と評した、バンコクの交通渋滞緩和の提案は、次のようなものです。まず、みちびきを始めとするGNSSから取得した車両の位置情報、監視カメラによる道路レーンごとの渋滞情報のデータを、携帯電話ネットワークを使って集約します。これを、AIの解析により車両と歩行者を切り分けた上で、渋滞緩和につながる信号の操作タイミングを導出し、交差点ごとに配置され信号制御を司る警官のスマートフォンに送信することで、警官が個々の判断で信号機を切替えていた従来に比べて、大幅な交通渋滞緩和を実現できる、というアイデアです。Sonskuln Thaomohr氏(チーム名:AI.Space)が発表しました。

S-Boosterの公式サイトでは、過去3年分の最終選考会の模様を見ることができます。

(取材・文/喜多充成・科学技術ライター)

以上