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[WTP講演](1)マルチGNSSによる測位性能向上に期待(東京海洋大・久保氏)

2016年06月10日

マルチGNSSによる測位性能向上と補正データ送信に期待

── 東京海洋大学 海洋工学部 准教授 久保信明氏

5月27日、「ワイヤレス・テクノロジー・パーク(WTP)2016」のセミナー「ロケーションサービス~準天頂衛星、屋内測位、位置情報利用~」の基調講演で、東京海洋大学海洋工学部准教授の久保信明氏が、「衛星測位を利用した高精度位置決定の現状と未来(車両の観点)」と題して、低コスト受信機を利用したマルチGNSS測位の精度について報告しました。

4機体制になることで、さらなる精度向上へ

東京海洋大学 海洋工学部 准教授 久保信明氏

最初に東京海洋大学近辺を走行中の位置情報を、同大学越中島基準局からの補正情報を用いたRTK-GNSS(RTK=Realtime Kinematic、固定点の補正データを移動局に送信してリアルタイムで位置を測定する方法)でGoogle Earthの地図上にプロットした結果の精度を紹介します。MEMS(Micro Electro Mechanical System、微小電気機械システム)、車速パルス(=車のタイヤの回転角をカウントする信号)、RTK-GNSSの3つを合成したリファレンス位置と比較してFIX率が74%となっています。これは10年前であれば測量用のRTK-GPS受信機でなくては達成できない精度でしたが、今回の実験で用いたのは100ドル程度の民生用受信機でした。

50cm程度の精度であれば、車線判定には十分と言えます。実験時、準天頂衛星「みちびき」は80度ぐらいの高い仰角にあり、FIX率に対する寄与は13%程度となっていました。みちびき1機でもGalileoと合わせてBeiDouに迫る寄与をしており、4機体制になることでさらに精度の向上が期待されます。RTK-GNSS測位の場合、精度を保つためには補正信号が切れ目なく受信できることが重要であり、衛星や携帯回線などの通信品質が課題となります。

講演風景

測位性能向上には、補正データの質が重要

一方で、カーナビ等で実際に使われているコード測位やドップラ速度を利用した測位の場合、特に都市部では停止時にマルチパスの影響を受けやすく、20~40m程度の誤差が発生する場合があります。高層ビル街ではさらに劣化します。ドップラ速度を利用すると、コード測位と比較してマルチパスの影響を受けにくく、停止時のマルチパスもある程度排除できるので、プラスマイナス3~5m程度にまで小さくなります。

東京海洋大学 海洋工学部 准教授 久保信明氏

しかしこれ以上誤差を小さくするためには、補正データを用いることが必須で、ディファレンシャルGNSS測位をドップラ速度と併用すると、通常都市部でもプラスマイナス2m以内に99%程度の観測値が入ります。RTK-GNSSと車速センサーとIMU(Inertial Measurement Unit、慣性計測装置)を組み合わせることで、低価格受信機でも水平精度50cm~1m程度は十分に期待でき、従来のカーナビには求められなかった車線判定などにも使えるデータになりますが、補正データの質が重要となります。

久保氏は、「みちびきはマルチGNSSによる測位性能向上と補正データ配信ができることで、測位精度向上に寄与すると期待しています」と述べました。課題としては、こうした測位によって求めた位置の信頼度の定義の検討と、ビッグデータや機械学習によるシミュレーションの活用を挙げました。

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