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[報告] G空間EXPO2018でみちびき講演会を開催

2018年12月21日

内閣府宇宙開発戦略推進事務局は2018年11月15日、東京・お台場の日本科学未来館で開催中のG空間EXPO 2018において「『みちびき』はじめました!! ── 準天頂衛星システム講演会」を開催しました。

滝澤参事官

滝澤参事官

開会挨拶に立った内閣府宇宙開発戦略推進事務局の滝澤豪参事官(準天頂衛星システム戦略室長)は、11月1日にみちびきのサービスが正式に開始されたことを報告し、「みちびきの高精度測位に対応したサービスの提供がすでに始まっているだけでなく、受信機やアンテナの低価格化と小型化が進みつつあり、今後はますます皆さまの身近な製品に搭載され、お役に立てる日が来るのではないかと思います」と期待を述べました。

滝澤参事官

── ソフトバンク 永瀬淳氏

永瀬氏

永瀬氏

続く招待講演では、最初にソフトバンク株式会社の永瀬淳氏(ICTイノべーション本部 ICTI戦略統括部 部長)が登壇し、みちびきのSLAS(サブメータ級測位補強サービス)への同社の取り組みを説明しました。同社は2011年に網走において屋外・屋内シームレス測位の実証実験を、2013年には屋久島において山岳地帯での測位精度検証実施すると共に、種子島でSLAM(自己位置推定と環境地図作成を同時に実行すること)とAR(拡張現実)への応用などを行いました。
また、SLASに対応したマルチGNSS端末も発売しています。このデバイスは遠隔操作で位置情報を送信することが可能で、たとえば自動車に乗った時の軌跡ログからは、どの車線を走っているのかなどの情報や、コーナリング時の詳細な軌跡、インターチェンジ何番のゲートを通ったかといった詳細まで分かります。
みちびきの測位補強サービスがもたらす高精度な位置情報は、人流分析・マーケティングや、SLAM・ARを応用した構造物検査、車両管理などさまざまな分野に活用できます。永瀬氏は、「みちびきの高精度測位にはたいへん期待しており、当社もみちびき関連の事業を広げていきたいと考えています」と語りました。

永瀬氏

── フォルテ 葛西純氏

葛西氏

葛西氏

SLASに対応したGNSSトラッカーを提供する株式会社フォルテの葛西純氏(代表取締役社長)は、同社のIoTに対する取り組みを紹介しました。
まずスポーツ分野への活用事例では、サイクルイベントにおいてGNSSトラッカーで選手の位置情報を取得した事例を挙げて解説しました。この時はコース上20kmごとにジオフェンスを張り、大会スタッフがコース逸脱者やトラブルを的確に察知してサポートすることを支援しました。
また、ねぶた祭りにおける実証実験では、祭りのガイドアプリを作成し、ねぶたの各山車の現在地や移動履歴をスマートフォンに表示するサービスを提供しました。これにより観客は目当ての山車と自分との位置関係を把握できるようになりました。また、山車の解説を多言語対応したことで、外国人観光客がより祭を楽しめるよう工夫しました。
さらに、パートナー会社のジェネクスト株式会社と共同で提供開始した交通違反管理サービスや、みちびき対応の受信機とスマートフォンを組み合わせた視覚障碍者向けの歩行補助システムも紹介しました。このほかビッグデータ事業の将来ビジョンとして、位置情報やセンサー情報を組み合わせたビッグデータの収集及び解析により、交通手段や周遊プランを観光客に推薦できるようになる将来像を語りました。

葛西氏

── MASA 末永雅士氏

末永氏

末永氏

みちびきのSLASに対応した時計型ウェアラブル端末「ザ・ゴルフウォッチ プレミアムII」を提供している株式会社MASAの代表取締役社長、末永雅士氏は、同社のこれまでの歩みを紹介し、ゴルファーのために設計された同端末の特徴を紹介しました。
同端末を使うことにより、サブメータ級の高精度な位置情報を取得し、現在地とグリーンとの正確な距離を把握できます。この点について末永氏は、「ゴルフウォッチは精度が命で、10m違えばユーザーから文句が来てしまいます」と説明しました。
さらに末永氏はSLASに関して、「日本ではすでに多数のユーザーが、さまざまな1周波GPS機器を持っています。L1S信号によるサブメータ級測位補強サービスは日本独特の方式ですが、みちびきだからこそ実現できた優れた方式だと思います」と期待を込めて語りました。

末永氏

── マゼランシステムズジャパン 岸本信弘氏

岸本氏

岸本氏

みちびき対応の受信機を提供しているマゼランシステムズジャパン株式会社の代表取締役、岸本信弘氏は、同社のL1対応マルチGNSS受信機を搭載した農業用トラクターや建機、ドローン、クローラーなどの動画を紹介した上で、みちびきに対応した高精度な多周波マルチGNSS受信機を紹介しました。
さらに、みちびきによるアドバンテージは、L6信号を利用することでセンチメータ級のデータが単独で得られることだと説明しました。同社が2017年8月より出荷を開始した評価キットは、L6のCLAS(センチメータ級測位補強サービス)方式とMADOCA-PPP(高精度測位補強サービス)方式の両方に対応した受信機であり、これは世界でもまだ例がないものです。
岸本氏は、両製品の測位性能比較を示し、これらの受信機を搭載したトラクターの実証実験の模様を紹介した上で、「サイズと消費電力をどんどん小さくしていこうと取り組んでいます」と今後の抱負を語りました。

岸本氏

── 三菱電機 明石陽平氏

明石氏

明石氏

CLASを使ったインフラ型自動運転システムを開発中の三菱電機株式会社の明石陽平氏(自動車機器開発センター AD技術部 自動運転システム開発グループ マネージャー)は、同社の予防安全・自動運転技術について紹介した上で、自律型とインフラ型の自動走行を組み合わせて、高い安全性と快適性を両立した自動運転を実現するという同社の方針について解説しました。
インフラ型自動運転については、同社はGNSSと慣性航法装置(INS)を組み合わせたGNSS/INS複合航法を採用しており、これらを活用した雪道での自動運転の実証実験の様子を紹介しました。
また、インフラ型自動運転の基盤となるダイナミックマップについても解説した上で、今後はSIP(戦略的イノベーション創造プログラム)に参加してダイナミックマップを活用した自動運転システムの高度化に取り組むほか、グローバルでの自動運転の実証実験にも取り組むと語りました。

明石氏
鎌形社長

鎌形社長

最後に、事務局を代表して準天頂衛星システムサービス株式会社の鎌形亨代表取締役社長が閉会の挨拶を行い、講演会は終了しました。

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