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第2回準天頂衛星シンポジウム:開催レポート

2014年09月03日

関西地区における利用拡大に向けて

2014年7月31日、大阪市中央区のNEC関西ビルで「第二回準天頂衛星シンポジウム」(主催・準天頂衛星システムサービス株式会社)を開催しました。今年2月の東京・浜松町での開催に続く2回目の開催となる今回、来場者は約100名に上りました。

開会挨拶

シンポジウムの開会挨拶

冒頭の開会の挨拶では、日本電気株式会社の村井善幸が、準天頂衛星プロジェクトの意義とシンポジウムの位置づけを紹介しました。

2013年3月に設立された準天頂衛星システムサービスは、実運用に向けて、有効に利活用する人を広げるための情報発信に取り組んでおり、今回のシンポジウムもその一環であるとして、「今回は、準天頂衛星システムの情報を我々から提供するだけでなく、活用を考えている方にも講演していただく。来場した方がこれらを有益な情報とし、準天頂衛星利用の核となっていただきたい」と期待を語りました。

来賓挨拶

内閣府宇宙戦略室 守山宏道参事官

続いて来賓の内閣府宇宙戦略室 守山宏道参事官が挨拶を行いました。

守山参事官は、準天頂衛星システムを「宇宙と地上、官と民をつなぐまったく新しい公共インフラ」と表現。利用用途と関連産業の幅が広いシステムであり、新たな産業・社会システムの分野でわが国に4兆円の市場創出効果があると議論されていると紹介しました。

また守山参事官は要望として「4つのF」、Free(自由)、Flexible(柔軟)、Flesh(新鮮)、そして4つめにFujisan(富士山)を挙げました。「(富士山のように)頂が高いシステムはすそ野が広い。2020年の東京オリンピックの年に、準天頂衛星システムを使った新たなサービスを期待したい。そのために内閣府も取り組みに協力していきたい」と述べました。

準天頂衛星システムについて

準天頂衛星システムについての概要説明

日本電気株式会社から、準天頂衛星システムの概要を解説しました。

準天頂衛星システムをひと言でいうと「GPSの日本版」というイメージが近くなります。GPSはアメリカが運用するシステムなので、日本で運用するには最適化されていません。これを補い、日本で高精度な測位サービスを提供するのが準天頂衛星システムです。GPSと同じ周波数帯の電波を利用しているため、GPSと一体で運用できるのが特徴です。

地上から見ると8の字型に見える「準天頂軌道」に3機、赤道上の静止軌道に1機の合計4機の衛星を使用します。8の字型の軌道はアジアからオーストラリア上空まで伸びていますので、アジア太平洋地域でも準天頂衛星システムを利用することができます。

基調講演「ロボットコンバインによる自動収穫システム」

京都大学 飯田訓久教授

基調講演では、京都大学の飯田訓久教授が、農業機械の自動収穫システムを研究する立場から、準天頂衛星への期待を語りました。

まず飯田教授は、現在の農業機械自動化の状況について紹介しました。トラクタ、コンバイン、田植え機などの農業機械は、植える、刈る、脱穀するなどの作業の自動化だけでなく、完全な自動化に向けて移動の自動化も進められています。屋外で作業するため、衛星測位システムとは相性がいいのが特徴です。

農業機械のキーワードの一つが「情報化」です。生産効率を上げるために、「どこで何がどれだけ収穫できた」という情報を正確にマッピングし、効率よく土地を利用するICT農業の流れが始まっています。ここでは、農業機械が、位置情報とそこでの収穫量を正確に記録する収量モニターとして機能します。

海外ではロボットコンバインによる自動収穫はすでに実用化されていますが、日本の本州にそのまま導入するというわけにはいきません。広い海外と異なり日本の田畑は狭いため、位置を正確に特定して刈り取るため最適な経路を自動生成するのが課題となります。また、完全な自動化には、コンバインのタンクがいっぱいになった時に移送用のトラックまで自走し、収穫物を積み替えて再度収穫を開始する、という動作も必要です。

農業機械の自動収穫システムについての講演

稲は30センチメートル間隔で植えられているため、最低でも誤差は15センチメートル以内、できれば3~4センチメートル単位の精度であることが求められます。飯田教授らのロボットコンバインは、GPSとGLONASSの信号をGNSSレシーバーで受信し、携帯電話経由で補正情報を受信して位置情報を取得しています。「衛星の信号を携帯電話経由で補正するのは手間がかかるし、山間部など携帯電話が使えない場所もあります。準天頂衛星で補正情報が衛星から取得できるのは、ユーザーにメリットがある」と期待を語りました。

続いて、来賓として、京都市都市計画局の堀池雅彦氏、ヤマハ発動機株式会社の今井浩久氏、アイサンテクノロジー株式会社の細井幹広氏の三氏が講演を行いました。

京都での「みちびき」を活用したナビゲーション

京都市交通政策監の堀池雅彦氏は、2020年の東京オリンピックに向けた「交通」をキーワードにした街づくりへの取り組みとして、観光客・障害のあるお客様までを視野に入れた「みちびき」を活用したナビゲーションの例を紹介しました。

京都市都市計画局 堀池雅彦氏

2013年には年間5,162万人(うち宿泊外国人は113万人)の観光客が訪れたという国際観光都市・京都は「歩いて楽しいまちなか戦略」として、歩行者を中心に据えた街づくりに取り組んでいます。これは、戦禍を免れたため道路も狭く、古い街並みが観光資源でもあるため道路拡張が難しいという街の特性によるものです。

現在、歩行者の移動を支援するために提供しているアプリでは、市バス車両に搭載しているGPSの位置情報から、バスの到着予測時刻と目的地までの所要時間を提供しています。堀池氏は、「現在は到着予測時刻には最大10%程度の誤差が生じているが、準天頂衛星システムの運用が4機体制になれば到着時刻予測の精度も高くなる」と語りました。

京都におけるシステム利用についての講演

また、京都市では産学官が連携して、20年後の京都の街の姿を創造する「京都未来交通イノベーション研究機構」を、8月下旬に立ち上げるべく準備を進めています。この研究機構の中でG空間情報を活用したバリアフリーナビに取り組む方針で、3Dマップにバリアフリー情報を重ねてさまざまな情報を提示します。堀池氏は「風情がある石畳も車いす利用者にとってはバリア。迂回路をナビゲーションするには、車いす利用者の位置情報を正確に知る必要がある」として、「みちびき」で位置を正確に取得してナビゲーションするのが今回の取り組みの肝であり、「メートル単位の誤差で測位するのでは車いすのナビゲーションは危険なので、みちびきで正確に測位して京都のまちを安全、快適に移動してほしい」と期待を述べました。

ヤマハ発動機の無人ビークルとQZSSへの期待

ヤマハ発動機(以下ヤマハ)株式会社の今井浩久氏は、無人で運行する無人ビークルへの取り組みと準天頂衛星システムによる測位適用に対する期待を語りました。

ヤマハ発動機株式会社 今井浩久氏

ヤマハの無人ビークルに対する取り組みは25年以上前から行われています。農薬散布用のラジコンヘリコプターから始まり、2000年には産業用無人ヘリに対する自律航行技術を開発。現在は、無人車や無人艇にも展開されつつあります。

自律航行ヘリは火山の火口付近など人が立ち入れない危険な場所や、山間地の災害現場など到達するのに時間がかかる場所の機動的な観測に利用されています。また無人艇は、ソナーを取り付け、ダム湖の底にたまる土砂の高さの測定に使われています。

いずれも精度の高い位置情報が求められますが、実際には山間部などGPS信号の精度が必ずしも十分ではない場所での作業も多いのが現状です。また、観測機材の操作などは2.4GHz帯の無線通信を利用して基地局からコマンドを送信していますが、電波がさえぎられると観測の続行が難しくなるため、現状では基地局が適切な位置に移動する必要があります。

準天頂衛星システムの自立航行ヘリへの利用についての講演

準天頂衛星システムには、谷間などGPSの精度が十分でない地域での補完と、基地局による機動的な追尾を可能にするセンチメータ級補強信号の活用、また受信機の低価格化を期待しており、「準天頂衛星システムのS帯の双方向通信を活用できれば、見通しがない場所でも基地局との通信が途切れることがなくなるため、より機動性が高まる」と語りました。

準天頂衛星を使用した車線認識

アイサンテクノロジー株式会社の細井幹広氏は、みちびきのL1-SAIF補強信号を用いて、車線認識を行う実証実験を紹介しました。この実験は、位置情報を利用して走行中の車線を判定し、カーナビゲーションシステムと連動して適切な車線選択を運転者に提示するものです。

アイサンテクノロジー株式会社 細井幹広氏

「みちびき」のL1-SAIF信号はサブメータ級の測位精度を実現しますが、既存のナビゲーションシステムで使用している地図情報は精度が不足しており、また車線情報まで含む地図データがなかったため、プロジェクトはまず、3D高精度地図情報の作成から始まりました。並行して、道路のモデリングとアプリケーションの開発を行いました。

コースは「市街地」「郊外」の2パターンを想定しています。名古屋市内を走る市街地コースは、中央より車線にあるバスレーンの認識も実現しています。郊外コースは複数車線でアップダウンがあるルートを想定し、地図を作成しました。アプリはAndroidで開発しており、音声と簡易グラフィックで情報を表示します。車線認識ナビは、「交差点近くで無理に車線変更をさせない」ために、「曲がるべき交差点の手前の適切なポイントで車線変更をうながす」「変更が間に合わなければ別ルートを探索する」というロジックを設定しました。

準天頂衛星をしようした車線認識についての講演

実証実験では、マルチパスの影響の少ない郊外コースで、適切な車線の提示に99%以上成功しました。失敗したのは隣にトラックが来て衛星の信号が遮蔽された時でした。主に地図情報の精度により、交差点付近での正確性や鋭角のカーブが苦手である等の課題はありましたが、オープンスカイであれば十分に実用可能であるという結論が得られました。

準天頂衛星利用拡大に向けた取り組み

シンポジウムの後半は、準天頂衛星利用拡大に向けた取り組みを報告しました。

準天頂衛星利用拡大に向けた取り組みを報告
準天頂衛星システム2018年までの事業計画最新情報

利用拡大推進活動の今年度の主な計画は、情報収集・発信、利用実証推進、アジア太平洋地域への利用拡大の3つにフォーカスしています。地上局の設置については、主管制局2か所・追跡管制局7か所の設置場所はすでに決まっており、監視局の設置場所を現在海外も含めて検討中です。

利用実証の公募は7月30日に始まりました。ビジネス化に向け、実証実験をサポートします。利用分野が増えることで受信機の数が増え、価格が安くなってさらに利用のハードルが下がるので、さまざまな分野で準天頂衛星システムを評価していただきたいと考えます。

情報収集発信について

準天頂衛星システムの利用拡大に向けた情報発信は、Webサイトを中心に行っており、準天頂衛星システムサービス株式会社の主催イベントや出展イベントの情報を発信しています。

今年2月に設立された準天頂衛星システム利用者会(QSUS)は、7月末時点で約350名の方に参加いただいています。会員は準天頂衛星システムに関する最新資料が入手できるほか、インターネット上の掲示板による情報交換ができます。また、今後予定されている実証実験への応募も可能です。

利用推進拡大に向け、イベントを積極的に開催しています。5月に実施したアプリコンテストでは、47点の作品の出展があり、出展作品はWebサイトで紹介しています。10月には「GPS/QZSSロボットカーコンテスト」を開催します。衛星測位しながら自律走行するロボットカーで2種類の競技を実施します。参加チームには希望に応じて準天頂衛星システム対応受信機の貸し出しを行います。災危通報を利用する競技向けには9月からテストデータを配信します。3位までの入賞者には、11月のG空間EXPOでデモンストレーションをしていただく予定です。

アジア太平洋地域への利用拡大

日本だけでなく、準天頂衛星システムがカバーするアジア太平洋地域においても、情報収集・発信、利用実証の推進、技術支援の3本の柱を中心に利用拡大を推進しています。具体的にはラウンドテーブルをはじめとした各種国際会議やMGA(Multi-GNSS Asia)、大学と連携した人材育成などを実施していきます。

昨年12月開催のラウンドテーブルでは、準天頂衛星システムの情報を発信すると同時に、海外におけるニーズの掘り起こしと活用のあり方を議論しました。また、海外における実証実験を通じて、諸外国における準天頂衛星システムの利用促進を図ります。
昨年のラウンドテーブルにて、ベトナムにおける自動車の走行位置と走行速度を検証する共同実証実験を提案し、ベトナム関係機関と本年度に実施することで合意しました。

測位衛星に関連した各種国際会議に出席し、認知拡大と国際動向の収集を図っています。直近では、総務省とオーストラリア産業省が共同で開催するワークショップでプレゼンテーションとディスカッションを行いました。また、9月に開催される防災関連の国際会議でもプレゼンテーションを行う予定です。MGAのワークショップにも昨年度に引き続き参加します。

人材育成は、中長期的・持続的な準天頂衛星システムの利用発展をめざすもので、現在、慶應義塾大学、東京大学、東京海洋大学と連携調整中です。

利用実証について

準天頂衛星システムの利用実証は、準天頂衛星システムサービスと衛星測位利用推進センター(SPAC)が共同で推進します。そのためにサブメータ級、センチメータ級の測位補強データの生成とスケジュール調整は従来同様SPACが行いますが、受信機貸与などの参加者支援は準天頂衛星システムサービスとSPACが共同で行います。実証実験の参加者は、従来使用していたSPACの受信機はそのまま利用でき、新たに準天頂システムサービスが用意する受信機も使えるようになります。また、両者による実証実験支援Webサイトも新設しました。

準天頂衛星システムパフォーマンススタンダードおよびユーザインタフェース仕様書について

準天頂衛星システムのドキュメントには「パフォーマンススタンダード」(PS-QZSS)と「ユーザインタフェース仕様書」(IS-QZSS)があり、前者はシステム全体の整合性や精度、後者は衛星と受信機のインタフェース仕様とサービス仕様などの技術仕様を記載しています。

13章のうち、現在は1章「共通編」、2章「衛星測位サービス編」のドラフト版が公開されており、8月末を目標に英語版を作成しています。残りは、5章「衛星安否機能確認サービス編」、6章「測位技術実証サービス編」のドラフトを9月に公開し、その約1カ月後に3章「サブメータ級測位補強サービス/災害・危機管理通報サービス編」、4章「センチメータ級測位補強サービス編」のドラフトも公開予定です。

閉会挨拶

閉会の挨拶は、日本電気株式会社の神藤英俊が行いました。シンポジウムに多くの方々が集まったことに謝辞を述べた後、「すでに大学や企業で衛星測位情報を活用されている方の有意義な話を聞き、私たちもこれから利用実証に取り組み、キャッチアップして対等に話ができるようになりたい」と決意を述べ、シンポジウムを締めくくりました。