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「世界津波の日」に合わせ和歌山県で「Q-ANPI」実証実験 [結果レポート]

2016年11月28日

昨年12月の国連総会で決まった「世界津波の日」である11月5日に、全国の多くの地域で津波関連の防災訓練が実施されました。南海トラフ地震の大津波に備える和歌山県でも「『世界津波の日』地震・津波避難訓練」として県内各地で多くの訓練が実施されました。内閣府は和歌山県や地元自治体の協力のもと、この日の前後に県内5町6会場で、衛星安否確認サービス「Q-ANPI」の実証実験を実施しました。

1)由良町「衣奈会館」(10月29日)
2)太地町「太地町多目的センター」(10月29日)
3)広川町「稲むらの火の館」(11月5日)
4)串本町「サン・ナンタンランド雨天練習場」(11月5日)
5)那智勝浦町「下里小学校」「那智中学校」(11月6日)

今回の実証実験は、7月3日に和歌山県海南市の塩津小学校で行われた実証実験を経て改良を加えられたシステムの検証を目的としたもので、本稿では広川町と那智勝浦町の避難所での実証実験の様子を写真でご紹介します。

11月5日(土)広川町「稲むらの火の館」

広川町ウェブサイト

広川町ウェブサイト

「稲むらの火の館」ウェブサイト

「稲むらの火の館」ウェブサイト

1854年12月24日、「安政の南海地震」に続いて起きた大津波の際、貴重な現金収入の糧であった稲わらに火を付けて住民の高台への避難を促した濱口梧陵(五兵衛)の故事は、戦前の小学校教科書にも採録されるなど多くの人の知るところとなっています。その故事にちなみ、2007年4月に記念館と津波防災のための教育施設として「稲むらの火の館」が開館しました。
故事にあった日付を旧暦に直すと11月5日となります。日本はこの日を大津波に襲われた日ではなく被害軽減に成功した日として国連の場で提案し、昨年の国連総会で「世界津波の日」の決議が採択されました。いわば広川町は、津波防災における世界の中心とも言える場所なのです。

住民自身がタブレットに情報を入力する。

午前10時30分に、防災行政無線と携帯電話の緊急速報メール(エリアメール)で大津波情報(訓練)が伝えられ、数分のうちに住民が避難所でもある「稲むらの火の館」にやってきました。会場にはサーバー用PCやWi-Fiルーターなどからなる情報入力用のシステムが用意され、タブレットやスマートフォンを使って住民自身が氏名や電話番号などの情報を入力しました。また、今回の実験では海南市での実験と同様、安否情報を集約するサーバーとの間の伝送路はインターネット回線で代用されています。

津波防災教育センター3階のガイダンスルームで、住民がQ-ANPIの情報入力を体験。壁面の棚にぎっしりと非常用食料や飲料水が収納されている。

津波防災教育センターには、津波の威力を示す模型や、稲むらの火の逸話を各国語で伝える資料なども展示されている。隣接の濱口梧陵記念館には築堤の様子を示すジオラマが。「津波から村を守るべく、長さ600m、高さ5mの防波堤の築造にも取り組み、後の津波による被害を最小限に抑えました」と解説されている。

1時間あまりで56名分の入力が完了。テレビ・新聞などメディアの取材も多く、同日夕方にはこの場所から、全国放送のラジオ生放送(NHKラジオ第一、NHKワールド・ラジオ日本)も行われた。

「避難情報標識」のデモンストレーションを実施

「稲むらの火の館」の前庭では、準天頂衛星システム「みちびき」の災害・危機管理通報サービス「災危通報」による情報を受信し、電光掲示板と音声で周囲に知らせる「避難情報標識」のデモンストレーションも行われました。

また当日の午後には、国連訓練調査研究所(United Nations Institute for Training and Research=UNITAR、ユニタール)広島事務所が実施する「津波防災に関する女性のリーダーシップ研修」の視察団の訪問を受け「避難情報標識」のデモンストレーションを行いました。フィジー、キリバス、バヌアツなどの島嶼国14カ国からのメンバーは、システムの解説に強い興味を示していました。

解説に耳を傾ける視察団。災危通報は東南アジアやオセアニア地域でも受信が可能。解説に当たったのは首都大学東京 産業技術大学院大学の嶋津恵子教授。

小型受信機(QZ1)を示しながらシステムを解説。災危通報では、自然災害だけでなく、大規模事故、テロ・暴動情報の配信も検討されている。

11月6日(日)那智勝浦町「那智中学校」

那智勝浦町ウェブサイト

那智勝浦町ウェブサイト

風光明媚な観光地として全国的に知られる那智勝浦町は、熊野灘を望む県南東部に位置しています。人口は約1.5万人ですが、2011年9月の台風12号による「紀伊半島大水害」では、死者・不明者29名、全半壊と床上・床下浸水を合わせ2,400以上の家屋が被災という、もっとも大きな被害を受けました。当時は発災の早い段階で電話やインターネット、電気などライフラインが絶たれた経験もあり、住民にとって災害は忘れられない記憶として残っています。
その那智勝浦町での「Q-ANPI」の実証実験は、当時、避難所として使われた下里小学校と那智中学校の2カ所で行われました。ここでは那智中学校の様子を写真でご紹介します。

校舎の道路面には屋上避難のための外階段が設けられ、海抜が示されると共に「非常時の使用方法」が掲示されている。

「避難情報標識」のデモンストレーション。準天頂衛星の4機体制が整えば、上空の視野が限られる建物脇でも、時間帯に拠らず災危通報の受信が可能となる。

小さいお子さんを連れた家族も、それぞれに防災グッズを詰めたリュックを背負って参加。車椅子での参加もあった。

部活動のために登校していた、那智中学の陸上部と吹奏楽部の生徒も参加。折りたたみ椅子を出して高齢者にすすめるなど “避難所運営” に積極的に関わった。「熊本地震の現場でも実際に見聞きしていますが、中学生は避難所運営の“大きな力”になる。とても心強いことです」(和歌山県総務部危機管理局防災企画課課長補佐 片家康裕氏)

協力してくれた中学生を対象に臨時の「防災教室」が。片家氏(和歌山県危機管理局)の説明に聞き入る生徒たち。今回の実証実験と準天頂衛星システムの概要(How)だけでなく、集約された安否情報が災害支援にどう役立てられるかなど、なぜこのシステムが重要なのか(Why)が語られた。

5町6避難所での実証実験を終え、日本電気株式会社(NEC)準天頂衛星利用推進室の細井俊克室長は、「7月の海南市での経験を踏まえた改良で、前回よりもスムーズに実証実験を進めることができ、成功と考えています。さらにシステムの改良を重ね、伝送路に衛星を使うなど、より現実に近い状況を模した実験に備えていきます」とコメントしました。

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