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[報告] 第4回準天頂衛星シンポジウム

2015年12月18日

2015年11月17日、京都勧業館「みやこめっせ」において、第4回準天頂衛星シンポジウムを開催しました。昨年2月、7月、10月の3回に続く第4回目のシンポジウムは、初の京都での開催。11月16~19日に同じ会場で行われたGNSSに関する国際シンポジウム「IS-GNSS 2015」と同時開催となり、海外からの参加者も加わる賑やかなものとなりました。

準天頂衛星システムサービス株式会社の高坂資博 代表取締役社長

開会の挨拶に立った準天頂衛星システムサービス株式会社の高坂資博 代表取締役社長は、みちびきが4機体制でサービスを開始する2018年度は、「翌年にはさくらジャパンの活躍が期待されるラグビーワールドカップ、続く2020年には東京オリンピック・パラリンピックという利活用の大きなチャンスが控えており、多いに期待している」と述べました。

センチメータ級は、アジア太平洋地域での活用も視野

内閣府 宇宙戦略室の田村栄一企画官

最初の講演は、内閣府宇宙戦略室の田村栄一企画官が行いました。田村企画官は、みちびきの信号のうち、地上局のデータを利用して補強信号を配信する「補強」は、サブメータ級測位補強情報はL1S、センチメータ級測位補強情報はL6で配信されると解説。

L1Sは、GPSのみでは数mの誤差がある測位を2m以下の精度まで向上させ、さらに精度を上げるために2周波受信機を開発中としました。サブメータ級の実証実験は来年1~3月に開始される予定で、緊急通報時の位置通知や、自動車や船などの運行状況管理に活用されます。また、工事現場での建設機械の自動運転や精密農業、測量などに活用できると期待されているセンチメータ級測位補強サービスは、アジア太平洋地域での活用も視野に入れており、「地上局の整備などそれなりの設備が必要になるが展開を支援していきたい」と話しました。

2015年1月に公表された宇宙基本計画に掲げられた「宇宙安全保障の確保」「民生分野における宇宙利用の推進」「宇宙産業及び科学技術の基盤の維持・強化」の3つの目標の中で、みちびきには、産業活性化、災害対策も含め安全保障の一環としての対応、アジア・太平洋地域の発展に資することが期待されていると述べました。

京都におけるオープンデータ集積の取り組み

京都大学 学術情報メディアセンターの美濃導彦教授

京都大学学術情報メディアセンターの美濃導彦教授は、京都におけるオープンデータ集積の取り組みと位置情報活用の試みを紹介しました。美濃教授は、「情報は囲い込まず、共有・公開することで価値が出る」「情報は人を動かす力を持つ」「情報は人によって生じる」という3つの原則を挙げ、情報社会を「実世界にサイバー世界が重なった世界」と定義しました。そして、情報はグローバルに流通するが個人の行動はローカルなので、現実的には「人が行動する範囲」である都市エリア程度での情報集積が有効だとしました。

京都未来交通研究機構のオープンデータ集積構想では、地図や避難所などの静的情報を収集し利用しやすい形で表現し、監視カメラやスマートフォンの位置情報などの実時間情報の集積とアーカイブ方式を設計し、行政、企業、個人などが目的に合わせて利活用します。

その応用例として、修学旅行関係者全員による位置・安否方法共有システム(ETSS)の実験を紹介しました。グループ行動する修学旅行生に、地図や災害時の避難所情報などを入力したスマートフォンを貸し出し、GPSを使用してその位置情報を取得します。この情報を引率している教師、学校に残っている教師らが共有し、安全を確認します。GPSだけでは位置情報にブレがあるため、フィルターを適用してノイズを除いて環境制約を入力することで、90%の精度でバス、電車などの移動モードを推定することが可能でした。

美濃教授は、路線バスで移動中、ビルの谷間で測定誤差が大きく、登録した路線バスの経路制約を適用して交通手段を推定するには不十分な場合でも、みちびきを利用すれば高度な位置情報を利活用できるとの期待を表明しました。

実証実験はSPACとQSSが一体でサポート

NECの神藤英俊氏

後半は、日本電気株式会社(NEC)の神藤英俊氏らが順番に報告しました。

神藤氏は、実証実験は従来、一般財団法人衛星測位利用推進センター(SPAC)が窓口だったが、準天頂衛星システムサービス株式会社(QSS)も一体となってサポートを行う体制を整備し、サブメータ級測位補強対応受信機、センチメータ級測位補強対応受信機、多周波マルチGNSS受信機などの貸し出しを行っている点を紹介しました。

今後、JAXAからQSSに運用を移管

NECの曽我広志氏

NECの曽我広志氏は、衛星測位サービス(L1C/A、L1C、L2C、L5)は、地表において1機以上の衛星を仰角10度以上で可視となる範囲にサービスを提供するとし、アジア・太平洋全域が含まれるが、中でも日本はかならず1機以上が60度以上の仰角で見えるとしました。測距誤差は2.6m以下(準天頂軌道は1.0m以下、静止軌道は1.5m以下)を目標に開発中で、十分達成できる見込みと説明しました。

サブメータ測位補強サービスは、日本とその近傍では水平1m、垂直2m、その外側の海上等では水平2m、垂直3mの精度を目標とし、使用するL1S信号のメッセージは、DGPS補正情報は30秒間隔での放送を予定しているとの情報を示しました。

地上システムは現在、製造試験フェーズを進めており、2016年度前半の総合試験を経て、JAXAからQSSが運用移管を受けると明らかにし、「2017年の追加衛星打ち上げに合わせて地上設備も運用を開始できるよう整備を進める」と述べました。

センチメータ級の補強精度は衛星サービスでは世界初

三菱電機株式会社の廣川 類氏

三菱電機株式会社の廣川類氏は、センチメータ級測位補強サービス(CLAS)の進捗状況を報告しました。CLASではL6信号(みちびき初号機はLEX信号)を使ってセンチメータ級の精度が得られる補強情報を日本全国に配信します。廣川氏は、これは衛星サービスとしては世界初となるため、各方面から注目されているとアピール。

国内の電子基準点ネットワークであるGEONETから約1300件の電子基準点のデータをリアルタイムで取得し、みちびきにアップリンクで送信して全国配信する仕組みで、限られた帯域で伝送するため、さまざまな方式で容量圧縮することがキーポイントとしました。サービス範囲は日本全国をカバーし、静止時で水平6cm、垂直12cm、移動体は水平12cm、垂直24cmの精度が目標だとしました。

台湾ではマルチGNSSの方が高精度との実証結果

NECの永守正雄氏

続いてNECの永守正雄氏が、みちびきの海外利用展開を報告しました。その中で海外の実証実験をいくつか紹介し、ベトナムでVNSC(ベトナム宇宙委員会)と共同で行った実証実験では、複数のエリアを自動車で走行し、車の位置についてGPSだけの測位とみちびきを利用した測位の差を調査。その結果、みちびきを併用することで可用性が高まり、ロータリーなどでもズレが生じにくくなるという結果を得たとしました。

今年5月に台湾で行った実証実験は、台北の高層ビルが多いエリアで、現地時間の夜にGPSだけ、GPSとみちびきを併用した場合、GPSとGLONASSを併用した場合の3通りで歩行中の測位精度を比較しました。その結果、複数の衛星システムを統合的に使うマルチGNSSの方が、正しく道に沿った軌跡が得られ、精度が高いことが分かったといいます。

2015年12月からL1S信号を配信開始

最後にNECの兼子進氏が、QSSが実施した都市部での歩行中のQZ1測位モード比較や沖縄での2周波測位の精度実証などの成果を紹介しました。今後はサブメータ級測位補強の信号を提供できるよう、2015年12月からL1S相当信号を配信するとしました。それに伴い、16年1月から受信機(QZ1、QZ1 LE)をL1S信号に対応させて貸し出しを開始。12月からL1C/A、L2Cの2周波受信機(L1C/A、L2C)も貸し出すことを明らかにしました。

NECの細井俊克氏

閉会の挨拶はNECの細井俊克氏が行いました。細井氏は、2017年度の打ち上げまで時間が残り少なくなっており、「日本の産業、ソフト業界の活性化につながるため、今後とも利用拡大に協力してほしい」と締めくくりました。

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