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準天頂衛星システム「みちびき」を活用したドローン実証実験の実施について

2019年05月23日

[ニュースリリース]

内閣府宇宙開発戦略推進事務局と経済産業省は、NEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)、楽天株式会社に協力を要請し、株式会社自律制御システム研究所、三菱電機株式会社、一般社団法人日本ドローンコンソーシアム、公益財団法人埼玉県公園緑地協会と共に、埼玉県熊谷市にある熊谷スポーツ文化公園の「彩の国くまがやドーム」内で、準天頂衛星システム「みちびき」の高精度測位情報をドローンの自律飛行制御に活用し、物流分野でのピンポイント配送(1m四方以下のターゲットへの着陸)を想定した実証実験を国内で初めて行いました。

実験の結果、1m四方の枠内をターゲットとして、幅数cmの白線上へのピンポイント着陸に成功し、高精度なピンポイント配送を実現できることが分かりました。これにより、ドローン離発着場所の小型化や同一空域における複数機の運航実現性が確認でき、2018年11月1日にサービスを開始した「みちびき」の物流用途における活用可能性を検証することができました。
本成果については、2019年6月12~14日に千葉市の幕張メッセで開催される「ロケーション・ビジネス・ジャパン」の内閣府:「みちびき×ドローン」ブースにおいて展示を行います。

国内初、周囲が構造物で囲まれたドーム環境におけるピンポイント配送試験

図1

図1:実証実験場所と飛行経路
 ※くまがやドームにおいてテニスコートの白線上を約50m飛行

図2

図2:着陸精度実験結果の一例
 ※1m×1mの枠内をターゲット(幅数cmの白線上にピンポイントで着陸)

2018年11月1日にサービスを開始した準天頂衛星システム「みちびき」は、GPSを補い、非常に高精度な測位を行うCLAS(センチメーター級測位補強サービス)を提供できることや、天頂付近に長く留まることで衛星からの配信信号が周囲遮蔽物の影響を受けにくく、ビルの谷間などの場所での利用可能性が高いといった特徴を備えています。
一方、NEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)は、物流、インフラ点検、災害対応などの分野で活用できる無人航空機の性能評価基準などの研究開発を進めると共に、安全に社会実装するためのシステム構築及び飛行試験などを実施するプロジェクト (※1) を進めています。具体的には、運航管理システムの開発、衝突回避技術の開発、国際標準化活動に取り組んでいます。

今般、内閣府宇宙開発戦略推進事務局と経済産業省は、NEDOと楽天株式会社に協力を要請し、株式会社自律制御システム研究所、三菱電機株式会社、一般社団法人日本ドローンコンソーシアム、公益財団法人埼玉県公園緑地協会と共に、埼玉県熊谷市にある熊谷スポーツ文化公園の「彩の国くまがやドーム」内で、「みちびき」の高精度測位情報(CLAS)を楽天ドローンの専用機体「天空」の自律飛行制御に活用し、物流分野でのピンポイント配送(1m四方以下のターゲットへの着陸)を想定した実証実験を行いました。今回の試験は、次の3つの意味を持つものです。

1)有限な空域の有効利用
将来、多数のドローンが飛び交う世界を想定した場合、高精度な測位とそれを用いた飛行制御が可能となることで、飛行するドローン同士の間隔を小さくし、有限な空域内で同時に数多くのドローンが飛行できるようになります。

2)画像認識用マットの省略
高精度な測位とそれを用いた飛行制御が可能となることで、着陸のための画像認識用マットや画像認識ユニットの搭載が不要となります。

3)ドローンポートの小型化
ドローンを用いた物流において高精度な着陸が可能になることで、ドローンポート(離着陸場)を小型化することができ、必要な場所に容易に配置することが可能となります。これにより効率的な運用ができるようになります。

今回の実証実験は「みちびき」を用いた飛行精度を検証するため、周囲が構造物で囲まれているドームにおいて実施しました。テフロン天井のドーム内は、屋外と比べて電波が減衰し電波強度が弱い環境である半面、風による影響を受けないため、着陸時の位置精度試験として適切なデータを取得することができます。また通常は、ドローンにカメラなどのセンサーを搭載して、着陸位置制御を行うといった方法が用いられますが、今回はカメラなどのセンサーは用いず、準天頂衛星システムによる位置制御のみを用いて実証実験を行いました。

実証実験の結果、1m四方の枠内をターゲットとして、幅数cmの白線上にピンポイントで着陸させることに成功し、高精度なピンポイント配送が実現できることが分かりました。これにより、上に掲げた有限な空域の有効利用や画像認識マットやドローンポート等の着陸用の地上設備の簡易化に関して、実現の可能性を確認すると共に、「みちびき」の物流用途における活用可能性を検証することができました。

なお、本成果については2019年6月12~14日に千葉市の幕張メッセで開催される「ロケーション・ビジネス・ジャパン」の内閣府:「みちびき×ドローン」ブース)において展示を行います。

実施期間:2019年3月12日~3月19日(事前試験含む)
実施場所:埼玉県熊谷市 熊谷スポーツ文化公園 彩の国くまがやドーム
実施内容:準天頂衛星システム「みちびき」の高精度測位情報を
     ドローンの自律飛行制御に活用し、飛行/着陸精度を確認
搭載機器:三菱電機株式会社 準天頂衛星対応高精度測位端末 AQLOC-VCX
     (対応補強信号:QZSS L6)
機  体:株式会社自律制御システム研究所/楽天株式会社 共同開発
     マルチロータ型ドローン「天空」(ロータ数:6、全長:1200mm、
     最大速度:水平20m/s、上下3m/s、耐風性能:10m/s)
主な成果:周囲が構造物で囲まれているドームにおいて実証を行い、1m四方の枠内を
     ターゲットとして、幅数cmの白線上にピンポイントで着陸させることに
     成功し、高精度な飛行が実現できることを確認しました。
     これを通してドローン運航の高密度化、離発着場所の小型化の実現可能性を
     確認できました。またこれにより、「みちびき」の物流用途における
     活用可能性を検証できました。
主  催:内閣府宇宙開発戦略推進事務局、経済産業省
協  力:NEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)、
     楽天株式会社、株式会社自律制御システム研究所、三菱電機株式会社、
     一般社団法人日本ドローンコンソーシアム、公益財団法人埼玉県公園緑地協会

【注釈】
(※1) プロジェクト
事業名:ロボット・ドローンが活躍する省エネルギー社会の実現プロジェクト
実施期間:2017年度~2021年度の5年間を予定(2019年度予算:36億円)

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