宝探しで理解する衛星測位(4)距離に誤差がある場合の測位
距離に誤差がある場合の宝探しについて考えてみましょう。
1)公園の樹上で見つけた宝箱の中に、次の宝につながるヒントが入っていました。与えられたヒントは「学校のどこかに宝を隠した」「花壇(A)から20m+X」「ベンチ(B)から30m+X」「校門(C)から25m+X」というものでした。Xがいったい何メートルなのかは記されていません。
2)そこで仮にXを20mと考え、長めのロープを用意しました。このロープは、花壇(A)から20m+20m=40m、ベンチ(B)から30m+20m=50m、校門(C)から25m+20m=45mのところで3本を束ね、結び目をつくりました。
3)A・B・Cに繋いだ3本のロープの結び目の内側にリングを通して束ねてみました。リングは好きな位置にスライドさせられるので、Xの長さを自由に変えることができます。
4)結び目とリングを持って歩きながら、ロープがピンと張る場所を探しました。ところが位置が定まりません。3本ともピンと張ったまま、リングが動いてしまうため、宝の位置が決まりません。
5)どうしたらよいか困って、ヒントが入っていた箱を探したところ、箱の底にもう1つのヒントが隠れていました。「校舎屋上の避雷針(D)から15m+X」というものです。そこで、もう1本ロープを増やして、端を避雷針に結び付け、反対側はリングを通して15m+20m=35mのところで、A・B・C・Dに繋いだ4本のロープを束ねて結びました。
6)A・B・C・Dの4カ所からロープを張った状態でリングをスライドさせてみると、校舎の非常階段で4本すべてがピンと張り、そこで小さな宝箱が見つかりました。その時のXは12mでした。(地面の下にもピンと張る場所はあり得ますが、地中なので除外します。)
つまり、それぞれの点からの距離に誤差がある場合には、3点ではなく「4点からの距離が決まる」ことで測位ができるというのが、分かってもらえたと思います。
監修:久保信明(東京海洋大学 大学院 准教授)、構成:喜多充成、イラスト:西井 匡
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