4月7日(日本時間)に2度目の「GPS週数ロールオーバー」
秒と週だけで表現する「GPS時」
GPSでは「GPS時」と呼ばれる独自の時刻体系が使われています。GPS時はUTC(協定世界時)1980年1月6日午前0時(日本時間の午前9時)を起点としており、(60秒×60分×24時間×7日=)60万4800秒で1週間が繰り上がります。年・月・日や時・分を使わず、現在の時刻を、起点から○週目の○秒目という具合に「週」と「秒」だけで表現する点が特徴です。
一方、「週」数(=週番号)を表現するために割り当てられているのは10ビットなので、0~1023までの数値しか扱えません。値が増えていくと2の10乗、すなわち1024週目にゼロに戻ります。この現象は「GPS週数ロールオーバー」と呼ばれています。
いわば「GPSの大晦日」で、最初のロールオーバーを迎えたのは1999年8月21~22日でした。(計算上は)さらにそこから1024週(=年間約52週×約19.7年)を経たUTC 2019年4月7日午前0時(日本時間の午前9時)に2度目のロールオーバーとなり、以後、週数のカウントは3巡目に入ります。
日本では4月7日午前8時59分41~42秒にかけて
皆さんもご存じのとおり、UTCでは時折「うるう秒」を挿入する補正が行われます。しかし、GPS時にうるう秒はありません。UTCとGPS時のズレが何秒あるかの情報が送信されており、これをもとに簡単な計算でGPS時からUTCを得ることができるからです。
現在のGPS時はUTCより18秒進んでいるので、実際にロールオーバーを迎えるのはUTCの日付が変わる18秒前、つまり2019年4月6日23時59分41秒(日本時間では4月7日午前8時59分41秒)から42秒にかけてとなります。
基本的には対応済みだが、古い製品などには注意も
1999年に続いて2度目となる、GPS週数ロールオーバー。社会ではすでに一度、経験済みの出来事であり、機器やシステムを作る側にとっては想定内の事象です。日常生活への影響も、特に心配することはありません。
日本全国に約1300カ所の電子基準点を設置・運用する国土地理院は、そこで使用しているGNSS受信機について、「メーカーから提供されているファームウェア(機器制御のための内部ソフト)を最新のものにアップデートすることで対応済み」としています。
とはいえ、以前よりはるかに多くの受信機が出回っている現在、GPS/GNSSに対する社会の依存度も高まっています。通信キャリア関連事業者は、基本的には対応済みとした上で、「古い受信機がそのまま使われている場合や、うるう秒の処理と重なる場合など、万一に備えた前後対応は想定している」などと説明しています。
米国政府のGPS公式サイトでも、「古い製品を使い続けている場合には注意が必要。ベンダー(製造元や販売供給元)を信用しつつも再度の確認を怠らない姿勢が重要である」とし、必要に応じGPS/GNSSの模擬信号を発生するシミュレーターを使って、未来の時刻の信号を生成し動作確認を行うことも推奨しています。
なお、将来は、GPSの衛星システムを更新する「GPS近代化」により、L2C、L5、L1Cの信号に新たなメッセージ(CNAV=Civil Navigation Message)が使われることで、週数ロールオーバーは事実上、解消します。CNAVでは週数のカウントのために13ビットの容量が割り当てられており、起点である1980年1月6日から数えて2の13乗=8192週(=年間約52週×約157.5年)後の西暦2137年に、次のロールオーバーを迎えることになるからです。これは、みちびきの信号体系も同様です。
文:喜多充成(科学技術ライター)、監修:久保信明(東京海洋大学大学院 准教授)
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