衛星測位サービス
QZS4機のうち1機以上のQZSが可視となる範囲を仰角毎の線として示している。(図中に示す数値は、仰角 [deg] を示す。)このうち、仰角10deg線の内側が、衛星測位信号を受けられる領域になる。
SIS精度
全ての信号について、「2.6m(95%)以下(RMS誤差1.3m)」を満たす。
電離圏精度
電離圏パラメータは広域エリアと日本近傍エリア向けの2種類があり、それぞれの対象領域内でのみ使用できる。それぞれの平均電離圏誤差は、「7.0m(95%)以下(RMS誤差3.5m)」を満たす。
UTC精度
QZSS時刻とUTC(NICT)とのモジュロ1秒の時刻オフセットを示すパラメータの精度は、「40ns(95%)以下(RMS誤差20ns)」を満たす。
アルマナック精度
アルマナックの精度は、以下を満たすものとする。
(1)アルマナック(LNAV(L1C/A))
- 位置精度:10km(3D-1σ)以下
- クロックオフセット精度:135m(1σ)以下
- クロックドリフト精度:50m/day(1σ)以下
- SIS-URE:3.0km(1σ)以下
- SIS-URRE:0.3m/s(1σ)以下(軌道制御期間を除く)
- SIS-URRE:30m/s(最大)(軌道制御期間を含む)
(2)Midiアルマナック(CNAV2(L1C), CNAV(L2C,L5))
- 位置精度:10km(3D-1σ)以下
- SIS-URE:3.0km(1σ)以下
- SIS-URRE:0.3m/s(1σ)以下(軌道制御期間を除く)
- SIS-URRE:30m/s(最大)(軌道制御期間を含む)
(3)Reducedアルマナック(CNAV2(L1C), CNAV(L2C,L5))
Reducedアルマナックの精度は規定しない。
地球回転パラメータ(EOP)精度
地球中心地球固定座標系と地球固定慣性座標系との座標変換に必要となる地球回転パラメータ(EOP)の精度は、以下を満足する。
X及びYの各軸の極運動精度:1.0mas(※)(95%)(≒20cm@QZS高度)以下(RMS誤差0.5mas)
UT1-UTC:2.0ms(95%)(≒666cm@QZS高度)以下(RMS誤差1.0ms)
((※)mas:milliarcsecond)
準天頂衛星と他GNSSとの時刻オフセット(GGTO)精度
QZSS時刻とGPS時刻のモジュロ1秒の時刻オフセットを示すパラメータの精度は「2.0ns(95%)(RMS誤差1.0ns)」を満たす。
コンステレーションアベイラビリティ
衛星4機のうち少なくとも3機が正常(healthy)な信号を同時に提供する確率であり、衛星測位サービスにおいては、「0.99以上」を満たす。
衛星測位信号(L1C/A, L1C, L2C, L5)の unhealthy 状態の定義を次の表に示す。
Unhealthy |
システム保守 | 軌道制御やアンローディングのような計画されたシステム中断によるサービス不稼働時。この時、ヘルスビットは"1"となる。 | |
システム異常 |
・測位信号が非標準コードを送信している場合 ・測位信号が1秒以上連続して追尾不能な場合(信号電力が20dB以上低下した場合を含む) ・プリアンブルまたは検査ビットが不正な場合 ・デフォルトメッセージの場合 以下のパラメータのいずれかが適切に生成できていないことを地上システムが検出した場合 ・電離層パラメータ ・QZSアルマナック ・UTCパラメータ ・EOPパラメータ ・GGTOパラメータ ・サービス障害が発生している状況により、アラートフラグまたはヘルスビットが"1"の場合 ・サービス障害が発生しているにも関わらず、警報を発していない場合 |
||
サービス障害 |
■RF異常 ・信号電力低下 ・送信信号電力の20dB以上低下 |
||
■週内秒カウントメッセージ不正 航法メッセージに含まれる週内秒カウント メッセージが不連続になる事象 |
|||
■SIS-URE異常 SIS-UREが送信するURAの4.42倍(ISF=0の場合)あるいは5.73倍(ISF=1の場合)を超える事象、及び/あるいは9.65mを超える事象 |
|||
■UTC異常 送信するUTCパラメータに基づくUTC時刻 オフセットが120nsを超える事象 |
|||
精度逸脱 | ・送信するURAが示す値が9.65mを超える場合 |
衛星1機ごとのサービスアベイラビリティ
衛星1機ごとに衛星測位信号が unhealthy でない確率であり、信号毎(L1C/A, L1C, L2C及びL5)に以下を満足する。
・QZO衛星:0.95以上
・GEO衛星:0.80以上
いかなる1時間においてもサービスが中断しない確率であり、衛星毎、信号毎(L1C/A, L1C, L2C及びL5)に「1-2×10-4 [/hour] 以上」を満たす。ただし、システム保守が48時間前までに通知されている時間帯は、継続性の算出におけるサービスの中断から除外する。
いかなる1時間においてもタイムリーな警報無しにサービス障害が発生する確率とし、衛星毎及び信号毎(L1C/A, L1C, L2C及びL5)に以下を満足する。
・1×10-5 [/hour] 以下(インテグリティステータスフラグ(ISFと呼ぶ)=0の場合)
・1×10-8 [/hour] 以下(ISF=1の場合)
タイムリーな警報は、サービス障害が発生してから警報が受信機に到達するまでの時間とし、警報手段ごとに以下を満足する。
サービス障害項目 | 警報手段 | 警報時間 |
---|---|---|
RF異常 | 非標準コード | 8.0秒 |
TOW不正 | 非標準コード | 8.0秒 |
SIS-URE異常 | 非標準コード | 5.2秒 |
UTC異常 | アラートフラグ | 30秒 |
信号構造
信号構造、PRNコード特性、及びメッセージ特性は、以下の表に示すとおりである。
信号構造
周波数帯 | 信号名 | 変調方式 | PRN コード名 |
オーバー レイコード名 |
メッセージ名 |
---|---|---|---|---|---|
L1 | L1C/A | BPSK | C/A | - | LNAV(L1C/A) |
L1C | ※1 | L1CP | L1CO | - | |
BOC | L1CD | - | CNAV2(L1C) | ||
L2 | L2C | BPSK ※2 |
L2 CL | - | - |
L2 CM | - | CNAV(L2C) | |||
L5 | L5 | QPSK | I5 | Neuman -Hofman |
CNAV(L5) |
Q5 | Neuman -Hofman |
- |
※1:ブロックIはBOC、ブロックIIはTMBOCである。
※2:チップ毎の時分割多重により2つの信号を1つのチャンネルにする。
PRNコード特性
PRNコード名 | チップレート | 長さ | 周期 | オーバーレイコード |
---|---|---|---|---|
C/A | 1.023 Mcps | 1023チップ | 1 ms | - |
L1CP | 1.023 Mcps | 10230チップ | 10 ms | L1CO 長さ:1800ビット 周期:18 s |
L1CD | 1.023 Mcps | 10230チップ | 10 ms | - |
L2 CL | 0.5115 Mcps | 767250チップ | 1.5 s | - |
L2 CM | 0.5115 Mcps | 10230チップ | 20 ms | - |
I5 | 10.23 Mcps | 10230チップ | 1ms | Neuman-Hofman 長さ:10ビット 周期:10 ms |
Q5 | 10.23 Mcps | 10230チップ | 1ms | Neuman-Hofman 長さ:20ビット 周期:20 ms |
メッセージ特性
メッセージ名 | ビットレート | シンボルレート | 周期 (最小フレーム) |
符号化方式 |
---|---|---|---|---|
LNAV(L1C/A) | 50bps | - | 6 s | Hamming Code |
CNAV2(L1C) | 約50bps | 100sps | 18 s | CRC BCH,LDPC インタリーブ |
CNAV(L2C) | 25bps | 50sps | 12 s | CRC 畳み込み符号 |
CNAV(L5) | 50bps | 100sps | 6 s | CRC 畳み込み符号 |
周波数
周波数帯、中心周波数公称値、及び占有帯域幅は次の表に示すとおりである。
ただし、基準周波数f0=10.23MHzは地表面と衛星軌道上との差による相対論効果による影響を補償するためにノミナルΔf/f0=-5.399E-10だけオフセットしている。そのため、衛星軌道上における中心周波数は厳密には異なる。例えばL1周波数ではノミナル-0.8506Hzだけオフセットしている。
占有帯域幅
周波数帯 | Block I | Block II |
---|---|---|
L1帯 中心周波数公称値:1575.42MHz=154×f0 |
24.0MHz (±12.0MHz) |
30.69MHz (±15.345MHz) |
L2帯 中心周波数公称値:1227.60MHz=120×f0 |
24.0MHz (±12.0MHz) |
30.69MHz (±15.345MHz) |
L5帯 中心周波数公称値:1176.45MHz=115×f0 |
24.9MHz (±12.45MHz) |
24.9MHz (±12.45MHz) |
最低信号強度
最低信号強度は、円偏波受信で0dBiの利得の等方性アンテナを地上付近に設置し、仰角10度以上の可視の衛星からの信号を受信した時、最低となる出力レベルを示す。地球地表面における最低信号強度を次の表に示す。
最低信号強度
信号名称 | Block I | Block II |
---|---|---|
L1-C/A | -158.5dBW | -158.5dBW |
L1C | L1CD:-163.0 dBW L1CP:-158.25 dBW |
L1CD:-163.0 dBW L1CP:-158.25 dBW |
L2C | -160.0dBW (L2CLとL2CMの合計) |
-158.5dBW (L2CLとL2CMの合計) |
L5 | L5I:-157.9 dBW L5Q:-157.9 dBW |
L5I:-157.0 dBW L5Q:-157.0 dBW |
偏波特性
右旋円偏波である。
また、各信号の中心周波数において、その円偏波の楕円の長軸短軸の比率は、ボアサイト方向から±10度のビーム範囲で、次の表に示すとおりである。
円偏波の楕円の長軸短軸の比率
周波数帯 | Block I | Block II |
---|---|---|
L1帯 | 1.0dB以下 | 1.0dB以下 |
L2帯 | 2.0dB以下 | 2.0dB以下 |
L5帯 | 2.0dB以下 | 2.0dB以下 |
群遅延特性
(1)周波数間の群遅延
衛星のアンテナ位相中心端において、L1信号(C/A、L1CD、あるいはL1CP)とL2信号(L2C)間、L1信号(C/A、L1CD、あるいはL1CP)とL5信号(I5あるいはQ5)間の群遅延の差(PRNコード位相の差)の絶対値は表「信号間の群遅延の差の絶対値」に示す値以内である。
また、その変動は表「信号間の群遅延の差の変動」に示す値以内である。
信号間の群遅延の差の絶対値
信号 | Block I | Block II |
---|---|---|
L1-L2 | 25ns | 25ns |
L1-L5 | 20ns | 20ns |
L2-L5 | 10ns | 10ns |
信号間の群遅延の差の変動
Block I | Block II |
---|---|
任意の1日以内:2ns(3σ) | 任意の1日以内:0.6ns(95%) |
(2)同一周波数内の群遅延
衛星のアンテナ位相中心端において、C/AとL1CD、L1C/AとL1CPといったL1周波数、及びI5とQ5といったL5周波数それぞれの周波数内での群遅延の差の絶対値は表「同一周波数の信号間の群遅延の差の絶対値」に示す値以内である。
また、その変動は表「同一周波数の信号間の群遅延の差の変動」に示す値以内である。
同一周波数の信号間の群遅延の差の絶対値
Block I | Block II |
---|---|
規定無し | 10ns |
同一周波数の信号間の群遅延の差の変動
Block I | Block II |
---|---|
規定無し | 任意の1日以内:1.0ns(95%) |
PRNコードジッタ
PRNコードゼロクロスの間隔のジッタは3σ値で2.0nsを超えない。
また、PRNコードについて、Fallingエッジを正しいと見たときのRisingエッジの遅れ時間(あるいは進み時間)の平均は1.0nsを超えない。
コードキャリアコヒーレンシ
衛星のアンテナ出力端において、搬送波位相とPRNコード位相の差の変動は、1.2ns以下である。
アンテナ位相中心特性
オフナディア角0~9度の範囲における、L1、L2、及びL5周波数のアンテナ位相中心の変動(位相変動)は、±18度以下である。