ユーザー環境性能評価:自動車(QSS:一般道におけるCLAS測位状況調査)
センチメータ級測位補強サービス(CLAS)について、代表的な移動体である自動車走行による測位ステータス・精度を公開することを目的として実施しました。神奈川県藤沢市周辺で年4回実施した自動車走行データについて、周囲環境別(衛星可視状況別)による測位状況の評価結果を報告します。
・計測日時:2021年5・9月、2022年1・3月
・計測方法:三菱電機所有乗用車
・CLAS:IS-QZSS-L6-004対応
・リファレンス:VRS+GNSS/INS複合測位
・評価条件:リファレンス、CLAS共にFIX解が得られたものを評価
1年4回の走行により、高精度測位のアベイラビリティにおいて、季節による変動は確認されず、エリア(衛星の可視性)に依存し、オープンスカイエリア・郊外エリアでは高いことが確認できました。
オープンスカイエリアや郊外エリアでは、衛星数も常時11衛星を上回っており、HDOPも1.1以下(*)と安定しており、どのような条件下でもFIX率が80%以上、郊外エリアでは50%以上で高精度測位解を得られています。一方、都市部に近づくに従って測位に利用される衛星数が限られるようになり、HDOPの値も比例して悪くなっており、FIX率は準都市エリアでは40%以下、都市エリアでは10%以下の高精度測位解であり、高架側道やビル街においては高精度測位解が得られにくい環境にあります。
(*) HDOPの閾値(1.1以下)は、CLASのPS(パフォーマンススタンダード)において精度指標の閾値として採用されていることを参考にしました。
前項の定義に基づき分類したオープンスカイエリア及び郊外エリアでは高精度測位解が連続しており、水平測位精度が5cm前後、垂直測位精度が9~15cm程度です。準都市・都市エリアでは大幅に精度が劣化しています。また、藤沢駅周辺の都市エリアではFloat解や単独測位になることも多く、大きくずれた値になることも頻発しています。
季節ごとの比較・傾向について、4回走行した結果を示します。系統的な差異は見られませんでした。オープンスカイ・郊外エリアでは、水平12cm、垂直24cm以内に収まっていることが確認できます。準都市エリア・都市エリアでは、衛星測位のみでの位置計測が難しいエリアのため、CLASと複合航法の組合せでの利用が適当と考えます。
4回の走行とも衛星数に大きな差異は見られませんでした。
衛星配置は季節により異なっていましたが、測位結果には大きな影響を与えていないことが分かりました。
オープンスカイ・郊外エリアではFIX率が高いですが、都市・準都市エリアではFloat解や単独測位になることがあります。
オープンスカイ・郊外エリアでは、水平12cm、垂直24cm以内に収まっていることが確認できます。
※本文中の画像及び図版:© Mitsubishi Electric Corporation