今期と元期とCLAS座標
日本は4つのプレートがぶつかり合うプレート境界に位置しているため、地震や火山活動が活発な地域にあります。これらの活動に伴う地面の変動(地殻変動)が日本列島で一様に発生しているのではなく、地域によって異なっているので、その量を補正してあげなければ、地図座標と一致させることはできません。
そこで、国土地理院から現在一般に公開されている測量成果(測地成果2011)では、日本列島を2つに分けて基準日(「元期」といいます)を設定し、「元期」における測量成果を公開しています。また、元期に対して、観測を行った時点を「今期」と呼んでいます。
地殻変動に伴うひずみの量は測量の精度に影響を及ぼします。さらにその影響は、年々大きくなっていくと考えられています。一度求められた測量成果は頻繁に改定されることはありません。測量成果を改定するとなれば、国家基準点だけでも約125,000点、さらにこれを上回る公共基準点、地図(都市計画図等)や境界標識まですべての成果を改定しなければならないからです。
そこで、「測量成果を改定せずに、既存の測量成果と観測結果の間に生じる地殻変動のひずみの影響を補正すること」を目的に導入されたのが、セミ・ダイナミック補正です。セミ・ダイナミック補正を行うことにより、測量を実施した「今期」の観測結果から、測地成果2011の「元期」において得られたであろう測量成果を高精度に求めることができます。既存の基準点の成果を改定する必要がないので、現行の成果をそのまま安定して利用することができます。また、測量計算の際に地殻変動の影響を補正することにより、測量計算の精度を確保することができます。
準天頂衛星から配信されているセンチメータ級測位補強サービス(CLAS)は、1台の受信機で精密単独測位を行うことにより、正確な今期の座標を出力できるサービスです。そのため、元期の座標に変換しなければ、元期の測量成果に基づいて作成された地図上の座標と整合させることはできません。一部の受信機では、1年間有効の地殻変動補正パラメータが既にインストールされており、変換後の座標値を出力することが可能となっています。用途に応じて、今期の座標で出力するか、元期の座標に変換して出力するかを選択して利用するようにしてください。
詳細は、下記の国土交通省 国土地理院ホームページをご覧ください。
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2024年11月14日
CLAS実証実験報告:公益財団法人日本測量調査技術協会
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2022年11月29日
ユーザー環境性能評価:土木建設(QSS:ダム工事におけるCLAS精度検証)
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2022年10月20日
ユーザー環境性能評価:鉄道(QSS:道南いさりび鉄道におけるCLAS測位状況調査)
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2022年08月24日
ユーザー環境性能評価:自動車(QSS:一般道におけるCLAS測位状況調査)
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ユーザー環境性能評価:農業(カワサキ機工:クローラ型車両の自動走行)
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2021年11月18日
CLASの従来フォーマットと新フォーマットの違い
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2017年09月28日
CLASテストライブラリ