コンテンツです

衛星測位サービス

GPSを補う衛星測位サービス

みちびきからGPSと同一周波数・同一時刻の測位信号を送信することにより、GPSと一体となって使用し、安定した測位をすることができるサービスです。現在、衛星測位の主な誤差要因は、(1)衛星数が少ないことによる誤差と(2)電離圏による誤差 の2つがありますが、みちびきを利用することで、この2つの誤差が改善します。

(1)衛星数が少ないことによる誤差

a)マルチパスによる誤差

「高仰角の衛星はマルチパスの影響が小さい」ことを示すイメージ図

マルチパスとは、電波がまっすぐに届くだけでなく、山やビルなどに反射して、複数のルートで伝播することです。反射した電波は、受信機に到達するまでに時間がかかることから「距離が遠い」と計測されるため、衛星測位においては、正確な測位を乱す要因です。
高仰角から発信される測位衛星の電波は、反射波が遠くまで届かないことからマルチパスが起きにくく、全体の測位誤差を改善することができます。測位に使用する衛星数が多い場合には、高仰角の衛星が含まれるため、測位誤差を改善できます。

b)衛星配置による誤差

衛星の配置によって測位精度が向上することを示すイメージ図

衛星測位を行う場合、上空の人工衛星がなるべく広い範囲にまんべんなく配置されていると測位精度が良くなります。上空にある衛星の配置バランスの度合いを DOP(Dilution of Precision)と呼び、水平位置については、低仰角の衛星が含まれると良くなることが知られています。

c)衛星数を増加させる対策

みちびきをGPS衛星と一体で利用する場合の受信イメージ図

a)b)の測位誤差を改善するためには、より多くの衛星が見えることが望ましいですが、GPS衛星は世界中で共有して利用しているため、各地点で見える衛星数は十分ではありません。

みちびきは、GPSと同じ測位信号(L1C/A、L2C、L5)を送信し、GPSと時計を同期させるため、GPS衛星が増えたものとして利用することができます。
準天頂軌道の衛星は日本付近からは仰角20度以上に約16時間留まるため、みちびきの4機体制により、GPS衛星とあわせてこれまで以上の数の衛星が見えるようになり、マルチパスと衛星配置の誤差を改善し、ビルや樹木などで視界が狭くなる都市部や山間部でも、測位の安定性が向上します。

(2)電離圏による誤差

電離圏による電波遅延を示すイメージ図

測定誤差のうち、最も大きな部分を占めるのは、電離圏による電波遅延です。 電離圏は、上空100~1000km付近にある電気を帯びた大気の層で、衛星からの電波が電離圏を通過するときに速度が遅くなります。電波到達が遅れるため、衛星と利用者の間を実際よりも長い距離と計算してしまい、誤差になります。

a)複数波の信号による電離圏誤差の改善

電離圏誤差低減により測位精度が向上することを示すイメージ図

電離圏による電波の速度遅延は、電波の周波数に応じて異なります。この性質から、電離圏での遅延による誤差は、「1つの衛星」から発せられる「複数の周波数の電波」を同時に受信して計算することで推定でき、ほぼ解消できるため、複数の周波数で信号を発することができる衛星を利用することで誤差を改善することができます。GPS衛星やみちびきの場合には、L1C/A信号と組み合わせてL2C信号やL5信号を利用することにより、電離圏誤差が改善します。

b)1周波の信号による電離圏誤差の改善

2周波受信機は高価であることから、当面の間は1周波受信機も広く使われることを想定しています。1周波受信機向けの電離圏補正としては、標準の測位信号であるL1C/A信号で配信している「KLOBUCHARモデルパラメータ」があります。

KLOBUCHARモデルとは電離圏の状況を方程式で近似したもので、その方程式のパラメータ数値を軌道情報などと合わせて測位信号で送信することにより、利用者は電離圏誤差を補正することができます。みちびきだけでなくGPS衛星からも米国が計算したパラメータ数値が送信されています。

なお、GPSの場合には地球全体を1つの方程式で近似するのに対し、みちびきでは「東南アジア・オセアニア地域」と「日本付近」の2種類のパラメータを作成して送信しています。近似式であるため、対象領域が狭くなるほど精度が向上するため、日本付近や東南アジア・オセアニア地域では、みちびきが送信する「KLOBUCHARモデルパラメータ」を使用することで測位精度が向上します。

以上

関連記事