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ジオイドとは何か? [前編]

2015年12月25日

高さの基準は、いったいどこに?

その場所の高さを示す「標高」という言葉には、実は厳密な定義があります。「標高5m」というのは、海面が5m上昇した場合に海岸線になる位置という意味で、基準はその場所の平均海面の高さです。標高が同じ2地点を、パイプで結び水で満たした場合、「水準」という言葉が示すように水はどちらにも流れません。もし流れるようなことがあれば、そこに標高差があることになります。
水を使えば標高が同じ場所を知ることができますが、いっぽう標高が同じ2地点が「地球の中心からも等距離」であるわけではありません。

ある場所の地下に重い岩石が集まっていた場合、周囲より重力の値は大きくなります。そして水もそこに引き寄せられます。たとえば湖の中央付近に重い岩石があったなら、その真上で水面は盛り上がって見えるはずです。

「湖の重力」図版

地球の重力は細かく見ると場所によって異なっており、「水面が盛り上がる」ような現象は世界各地で起こっています。「標高が0m」である点をつなげて面をつくり、その面で地球を覆うと「でこぼこ」した姿に驚くことになるかもしれません。このでこぼこした面のことを「ジオイド」と呼びます。最初の定義にあったように、この面が「標高」の基準となっています。

「地球とジャガイモ」の写真

地球の中心からの距離を「楕円体高」と呼ぶ

衛星測位では、計算を簡略化するため、ジオイド形状によく似せた仮想的な物体を、高さの基準としています。その物体の形状は回転楕円体、すなわち楕円を地軸(北極と南極を結ぶ線)で回転させてできた立体で、これを基準楕円体としています。衛星測位で扱う高さは、この回転楕円体の面を基準とした「楕円体高」と呼ばれるもので、これは標高とは異なります。
楕円体高を標高の代わりに「高さの基準」として使ってしまうと、重力の偏りやムラがあるため、「水が低いところから高いところに流れる」という現象が起こりかねません。我々が使う高さの基準としては、ジオイドを基準とした「標高」が望ましく、「楕円体高」はふさわしくありません。

地球をある経線で縦に割った時のジオイド(実線)の形状

国土地理院ウェブサイト掲載の図をもとに作図(原典:Milan Burusa・Karel Pec(1998), Gravity Field and Dynamics of the Earth, Academia, P87)

上の図は地球をある経線で縦に割った時のジオイド(実線)の形状を誇張して表現したもので、複雑な形をしています。

「楕円体高」を「標高」に変換する

こうした事情があるため、衛星測位で求めた「楕円体高」から「標高」を得るには「ジオイド」の助けを借りなければいけません。
「標高(=H)」は、回転楕円体からの高さである「楕円体高(=下図のHE)」から「ジオイド高(楕円体とジオイドの差=N)」を引いた値となります。いずれも楕円体面を基準とするHEとNを引き算することで、楕円体面の項が消えるわけです。そして日本全土の「ジオイド高(=N)」は精密に求められており、国土地理院のウェブサイトで公表され、ダウンロードして使用することもできます。

「楕円体高(=HE)」は衛星測位で求められるので、「ジオイド高(=N)」との差を取ることにより、「標高(=H)」に変換することができます。

「楕円体高」を「標高」に変換する図

(国土地理院ウェブサイト掲載の図をもとに作図)

監修:久保信明(東京海洋大学 大学院 准教授)、構成:喜多充成

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