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日本無線 脇 友博:みちびき対応の純国産ICチップを積極的に提供する

2014年05月23日
日本無線株式会社 執行役員 通信機器事業部長 脇 友博

無線通信などの通信機器システムを製造・販売する日本無線株式会社。同社は純国産のICチップにこだわり、みちびきを始めとするすべての測位衛星の信号を受けられる受信機の開発を目指していることで知られています。今回は、同社の通信機器事業部長である脇 友博氏に話を伺いました。

ルーツは海上での通信の仕事

── 衛星測位技術と貴社の関わりについて、少し歴史的なところから伺います。

日本無線 脇 友博・通信機器事業部長

脇 日本無線は、海上での通信の仕事にルーツがあり、ロランCとか、デッカ、オメガといった船舶の位置を出す装置を作っておりました。1970年代にアメリカのGPS計画について知り、英文の文献を調べるところからGPSの研究を始めました。GPSは船舶に利用できるし、場合によっては陸上での測位にも使えるかもしれないということで開発を進め、1982年に船舶用のGPS受信機を発表しました。

── その後の展開はどうだったのですか。

脇 あるメーカーからお声をかけていただき、車の位置を出す装置の開発研究を一緒にさせていただきました。その結果、1990年に初代のカーナビといわれる装置が発売になり、私どもはその装置用のGPS受信機を供給させていただいた訳です。

── その頃に比べると、測位技術をめぐる社会の状況はずいぶん変わりましたね。

日本無線 脇 友博・通信機器事業部長

脇 当時のGPSは、アメリカの国防上の理由もあって、精度が100mという時代でしたので、カーナビの位置精度も非常に悪いものでした。しかしその後、GPSの精度が10mになり、自動車運転の補助を行うカーナビだけでなく、車の運行管理や盗難防止など、用途が非常に広がってきました。

それに伴い、ただ電波を受けていればいいということではなくなり、電波を受けにくい場所やビル街などでの影響をどう少なくするかを、各メーカーがしのぎを削る時代になってきました。

── 現在ではアメリカのGPS以外の衛星測位システム、すなわち日本のみちびき、ヨーロッパのGalileo、ロシアのGLONASS、中国のBeiDouなどを加えたマルチGNSSの時代に入ってきています。貴社では、こうした状況にどのように対応してきましたか。

脇 海外に製品を輸出する場合には、その国の持つ測位システムに対応している必要があります。また、測位衛星の数が多くなれば、GPSと合わせて測位することによって精度が向上します。そのような訳で、私どもではすべての測位衛星の信号を受けられる受信機を開発してきております。

── みちびきへの対応は、いつごろから始まったのでしょうか。

脇 「みちびきを打ち上げます」という報道が流れた早い段階から、当然、私たちもやるべきだと考え、お客様から要望がある前に研究を始めました。いろいろな資料を集め、宇宙航空研究開発機構(JAXA)とも話をし、みちびき初号機が上がった段階で実波での受信実験等も開始しました。2013年にはみちびき対応の受信機の供給も開始しております。

日本無線 脇 友博・通信機器事業部長

みちびきは2018年には4機体制になるということで、電波を受けにくかった場所でも受けやすくなり、高精度の測位が可能になります。また、いろいろ便利な機能も持っています。日本だけでなく、東南アジア、オーストラリアもサービスエリアに入っていますので、みちびき対応を私たちの受信機の売りにしていきたいと考えております。

国産の部品を使うことによって信頼性が高まる

── 受信機のICチップの開発はどのようにしていますか。

脇 ICのチップは1年半から2年かけて完成させています。完成とは、信頼性の高い製品をお客様向けに量産できるところまでという意味です。実質の開発期間は1年ちょっとです。要素となる技術は日々の研究で行っており、新しいICをつくるとなると、それらの要素技術を組み合わせる形で開発を進めていきます。

また、価格を下げるためには、チップのサイズを小さくして、プロセスを高密度にしていく必要があります。これはとても大変で、ICメーカーと技術的にタイアップしながら進めています。

── 貴社のチップは純国産と聞いていますが。

脇 はい、そうです。最初からずっとそういう方針で開発してきました。

── その理由は何でしょうか。

日本無線の受信・測位モジュール

脇 ICを開発するには、衛星測位技術の中身を私たち自身が奥深くまでしっかり理解している必要があります。また、実際にものを作るに当たっても、国産の部品を使うことによって信頼性が高まります。何か故障が起こっても、全部分かっていれば、どのような対応も可能です。そうしたところから、お客様に安心して使っていただくためには、日本のオリジナルでやっていくべきだと考えております。

もちろん、海外のメーカーと一緒になってやっていくという方法もあります。しかし、何かあったときに中身がわからないと、問題を解決できないこともあります。そういうことがないよう、純国産でとにかく頑張ってくれというお客様の声も聞いております。

── 独自技術のみで他の国の衛星測位システムに対応するのは、なかなか難しいのではないですか。

脇 技術の基本的なところは、GPSとそれほど大きく変わるものではありません。各衛星測位システムの公式の仕様書を入手し、GPSで培った技術を土台にして研究をしています。当然、自分たちだけではままならない場合もあり、そのような場合は衛星測位システムを研究されている大学の先生にご指導いただいたり、場合によっては共同で研究をしたりすることもあります。

今後は消費電力を抑え、位置の精度を高めていく

── 今後の研究開発の方向性はどんなところにありますか。

脇 世界中の衛星測位システムに対応すること、いろいろな装置に組み込み可能とするためには消費電力を抑えることです。それと位置の精度を高めることですね。

日本無線 脇 友博・通信機器事業部長

── みちびきについて研究開発以外の活動は行われていますか。

脇 衛星測位利用推進センター(SPAC)の法人会員になっており、いろいろと活動させていただいております。高精度衛星測位サービス利用促進協議会(QBIC)にも参加しております。私どもは、みちびきの信号を受けられるチップを持っている訳ですから、これからは積極的にいろいろな実験に参加させていただきたいと思っています。

── みちびきのどのようなところに注目していますか。

脇 みちびきには、災害情報を送信できる機能があります。そういったところも私どもの受信機に取り入れて、ユーザーの方々に使っていただければと思っています。私どもは無線機のメーカーですから、無線機にも衛星測位システムを入れています。しかし、たとえば大きな台風が来るといった災害関連の情報が来ることはありません。そんな時にみちびきから情報が取れたりすると、ユーザーにとっては非常にありがたいのではないかと思います。

「緯度経度」は、世の中で一番ユニークなコード

── 衛星測位技術の未来にどのような展望をお持ちですか。

脇 世の中の動くものも、動かないものも、すべてのものにGNSSチップを組み込みたいというのが、私の夢なのです。緯度経度は、世の中で一番のユニークなコードです。緯度経度を一度登録してしまえば、GNSSチップの電源を入れて、測位した情報が取れれば、そこの住所は決まってしまう。そういった仕組みもできてくると、非常に面白いのかなと思います。

今はどこかに行く時、スマートフォンで自分の位置を確認していますが、将来はそのようなことがもっと簡単な方法でできるのではないかと思っています。

── 今後の抱負をお聞かせください。

日本無線 脇 友博・通信機器事業部長

脇 みちびきという日本の技術を、カーナビを始め、いろいろな装置に使ってもらうところが大事です。各メーカーも、製品を売るに当たって、「みちびき受信チップを搭載」とか、「日本の技術を使っている」というのが、非常に商品価値を高めることになっているようです。私どもとしては、ぜひそこに協力できればと思っております。

── ありがとうございました。

※所属・肩書はインタビュー時のものです。