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SPAC 中島 務:民間企業による準天頂衛星の利用を促進し、普及に貢献する

2014年03月03日
一般財団法人衛星測位利用推進センター 専務理事 中島 務

準天頂衛星の利用を促進するために、民間企業との橋渡しを行う衛星測位利用推進センター(SPAC)では、「みちびき」を使った利用実証実験の運用も担っています。SPACのこれまでの活動と今後の方針について、中島 務 専務理事に話を伺いました。

利用促進の柱は「補強」と「利用実証」

── SPACはどのような活動をされているのでしょうか。

衛星測位利用推進センター 中島 務 専務理事

中島 SPACは、準天頂衛星初号機「みちびき」が打ち上げられるより前の2007年2月に発足しました。

私たちの目的の1つは、「みちびき」打ち上げ後にどのように民間で利用するかを模索しながら、その利用促進を図っていくということです。もう1つは、準天頂衛星を日本の産業活性化に役立ててもらうことです。
そのために、打ち上げ後に利用実証実験を行ったり、普及促進のためにフォーラム、シンポジウムや地域講演会を開催して準天頂衛星の解説や利用のための情報を配信したりするなどの活動を行っています。これがSPACの基本的な役割です。

── 「みちびき」との関わりはどのようなものでしょうか。

中島 2008年4月に地理空間情報の高度な活用を目指した「地理空間情報活用推進基本計画」を政府が策定し、2012年3月に改定されています。SPAC発足直後の旧計画の中においては、国が衛星を打ち上げて技術実証を行い、民間が精度を高めたり付加情報を追加したりするといった「補強」と実際の「利用実証」を行うという大きな枠組みが決められています。私たちは「補強」と「利用実証」を利用促進の2つの柱と認識しています。

実際の作業としては、まず補強情報をつくらなければなりません。補強情報にはサブメートル級とセンチメートル級があって、両方の情報を配信するシステムをいろいろな機関の協力を得てつくり、現在も運用を続けています。
利用実証に関しては、まず利用していただくために準天頂衛星の受信機をつくりました。そして、新たに立ち上げた利用実証調整会議で実験を公募し、応募していただいた企業の方々に受信機を貸して実験を行い、実際に準天頂衛星がどのようなものか体感してもらいました。準天頂衛星からの補強情報は日本全国で一様のサービスが同じ精度で受けられるという点が、参加された企業の方々の関心を集めたと感じています。

無人トラクターの実験で大きなアピール

── これまでの利用実証の中で印象に残っている実験はありますか。

中島 いくつかありますが、たとえば北海道大学 大学院農学研究院の野口 伸 教授が行ったトラクターの無人走行実験があります。夜中に刈り入れの実験を行った際は、テレビ取材もあってライトを付けていましたが、本来は問題が起きない限り真っ暗闇でも無人で刈り入れを行うことができます。

また、東京海洋大学でデモンストレーションした時には、海外の通信社が世界に向けて発信してくれました。そんなに簡単に実現する訳ではありませんが、農業で無人トラクターのような方法が利用できれば、非常に大きなアピールになると思います。

衛星測位利用推進センター 中島 務 専務理事

もう1つは、観光案内です。広島と網走、種子島と3回の実証実験を行っていますが、回を重ねるごとに進歩してきています。
広島の実証実験では、まだ受信機の性能が十分に出せず、位置精度があまりよくなかった。それでも記憶に残っているのは、位置情報とソーシャルメディアがリンクしたからです。実験は広島の女子大生の方たちに協力をお願いしましたが、彼女たちが訪問先でスイーツを食べて、その情報をツイッターに上げると、それを見た人がGoogleのストリートビューで場所を確認したり、お店のサイトから通販でスイーツを取り寄せたりできるといったことが、新鮮な体験でした。

網走では、博物館になっている網走刑務所で屋内測位の実証実験も行いました。来館者が平均80分ほどかけて見学するとか、どんなコースを歩いてどこを省略するとか、そうした人の流れが第三者にもはっきりとわかるようになりました。
そして種子島では、経済産業省の補助をいただきましたが、AR(仮想現実)との組み合わせで、実際には存在しないアニメのキャラクターがスマートフォンやタブレット端末の中に出てくるといった新しい体験ができました。これは長い時間をかけて、こつこつと実証を重ねてきた努力が実を結んできた結果だと思います。

オールジャパンで海外展開できる仕組みづくりを

── 今後、準天頂衛星が4機体制へと移行するにあたり、どのような役割を果たしていかれるのでしょうか。

中島 まず一番大事なのは、4機体制になったときに企業が「よし、投資して新しい事業を起こそう」と思わせる環境に持っていくことです。そのために、これまでの利用実証で部分的には体感してもらえた次の段階として、今後は4機になったときのメリットを訴求して企業にも理解してもらわなくてはなりません。また同時に、準天頂衛星が持ついくつかの課題を払拭していくことも必要です。

衛星測位利用推進センター 中島 務 専務理事

── 海外への展開についてはどうでしょうか。

中島 海外にはBeiDouやGalileo、GLONASSなどの測位衛星システムがあって、それらを利用したサービスと競争するか競争を避けるか、競争するとすれば単独の企業では難しい。だから、官も民も補えるところは補いつつ、競争と協調によるオールジャパンで海外へ展開していけるような仕組みを構築する必要があるでしょう。私たちは、それに協力していきたいと考えています。

また、海外展開には、国内でつくり上げたシステムを海外へ持っていくのか、あるいは逆に海外のシステムを日本に持ち込むか、という2つの考え方があって、どちらがよいとは決められない。私たちは海外市場の調査も行っていて、先日も特別セミナーを開催して専門のコンサルティング会社のレポートを発表したりし、日本企業ができるだけ不利にならない展開ができるようにお手伝いすることも私たちの仕事だと思っています。

── 海外への情報発信はどのようにされているのでしょう。

中島 内閣府宇宙戦略室の主催でアジア太平洋地域の国々が参加するラウンドテーブルが行われた際には、デモンストレーションや民間利用の紹介などを行いました。また、JAXAが主催するMulti GNSS Asia/AOR(Asia Oceania Regional)ワークショップでは、SPACも共催して、オーストラリアやタイ、韓国、ベトナムなど、各国でセミナーや利用実証の報告をさせていただきました。

── 準天頂衛星システムサービス株式会社とはどのように連携していくのでしょうか。

衛星測位利用推進センター 中島 務 専務理事

中島 私たちからは、産業界の方々からのさまざまな意見や要望を準天頂衛星システムサービス株式会社に伝え、逆に準天頂衛星システムサービス株式会社から使える情報をいただくという形でこれからも協力させていただきたいと考えています。

私たちがこれまで長期間培ってきた知識や技術、人脈などを準天頂衛星システムサービス株式会社にも大いに活用してもらいたいですし、準天頂衛星システムサービス株式会社は衛星などのインフラに近い部分を担っているので、インフラ部分への企業側の意見や要望を吸い上げてもらえればと期待しています。

── ありがとうございました。

※所属・肩書はインタビュー時のものです。